水曜日, 3月 18, 2026
ホーム ニュース ポリティクス 利下げは消えた?パウエル退...

利下げは消えた?パウエル退場と「ウォーシュ相場」の幕開け

10
FotoField / Shutterstock.com

本日(3月18日)午後2時(米東部時間)、連邦公開市場委員会(FOMC)が今年2回目の政策決定を発表する。金利は据え置き——その結論はほぼ確実とみられている。CMEのFedWatchによれば、市場参加者の92%以上が現状維持を織り込んでいる。

だが今回のFOMCは、「また据え置きか」で片づけられる会合ではない。イラン戦争が経済の前提を書き換え、パウエル議長の任期は5月に終わる。読みどころは、金利の数字ではなく「ドットプロット」と「パウエルの言葉のトーン」だ。

戦争が変えた経済の文脈

2025年末、Fedは3会合連続で0.25%の利下げを実施した。インフレは鈍化傾向にあり、労働市場の軟化を受けた措置だった。今年1月の会合でも据え置きとしたものの、「利下げの再開は時間の問題」というのが市場の支配的な見方だった。

Operation Epic Fury(2月28日開始、米イスラエル主導のイラン攻撃作戦)はその文脈を一変させた。

原油価格は一時1バレル120ドル近くまで高騰し、現在も100ドル前後で推移している。1月のPCEインフレ(Fedが最も重視する物価指標)は前年比2.9%と、2%の目標を大きく上回ったままだ。

一方で景気は急速に冷えつつある。Q4 2025のGDP成長率は当初の1.4%から0.7%へと大幅に下方修正され、2月の失業率は4.4%と予想を上回る悪化を見せた。

インフレと景気後退リスクが同時に高まる——スタグフレーション型のジレンマが、戦争によって一気に現実味を帯びている。BofAグローバル・リサーチのアナリストは、Fortuneの取材に「市場は長期化する戦争のリスクを過小評価している可能性がある」と指摘した。

ドットプロットが動くとき

今回のFOMCでは、四半期ごとに公表される「ドットプロット」も注目される。これはFOMCメンバー19人が各自の金利見通しを匿名で点として示した図で、「委員会の多数意見の方向感」を読む唯一の公式な手がかりだ。

現在の中央値は2026年中に1回の利下げを示している。これが0回に後退するか、あるいは据え置きのままかで、市場の反応は大きく分かれる。0回への後退は引き締めシグナルと解釈され、株安・ドル高の方向に働きやすい。

政治圧力も無視できない。トランプは3月12日、Truth Socialに「連邦準備制度議長の『遅すぎる』パウエルはどこにいるのか。今すぐ金利を下げるべきだ」と投稿した。Fedの独立性を巡る緊張は、今回の記者会見でも記者の質問に上るだろう。

パウエル、事実上の「最後の正念場」

パウエルの任期は5月15日に終了する。今回と4月の会合が、事実上、彼が主導する最後の2回だ。

さらに異例の状況が重なっている。司法省(DOJ)は1月、Fed本部の改修工事をめぐる議会での虚偽陳述疑惑でパウエルに大陪審召喚状を送付した。現職のFRB議長が司法当局の捜査対象となるのは極めて異例であり、制度の独立性そのものが問われる局面に入っている。

パウエルはこれに対し、「この前例のない行動は、Fedがトランプの意向ではなく使命に基づいて金利を設定したことへの圧力の文脈で見るべきだ」とビデオ声明で応じた。

パウエルは政治圧力と戦争の不確実性の双方に対して、どこまで「独立したFed」の姿勢を維持するか。今日の記者会見で発言が注目される。

5月以降 ウォーシュ新体制が変える市場の文脈

トランプはすでに後任としてケビン・ウォーシュを指名している。ウォーシュはバーナンキ議長時代の側近として2008〜09年の金融危機を乗り越えた人物で、市場からの信頼は厚い。金融政策スタンスはよりタカ派と見られている。

一方で、そのスタンスは単純ではない。過去にはクリプトを「投機的過剰」と批判したが、個人としてはビットコインETFを手がけるBitwiseや、クリプト特化ベンチャーのElectric Capitalに投資しており、ビットコインを「中央銀行を監視する番人」と評価したこともある。

ウォーシュ指名が最初に報じられた1月30日、ビットコインは6%下落、XRPは同週15%超下落したと報じられており、市場の受け止めは慎重だ。

確認プロセスにも不確実性が残る。上院銀行委員会のティリス議員はウォーシュを評価しつつも、DOJによるパウエル捜査が継続中である限り賛成票を投じられないと表明。その後やや姿勢を軟化させたが、捜査の行方が確認タイムラインの最大の変数となっている。

万一5月15日までに承認が間に合わない場合、理事会が現職理事の中から議長代行を指名する可能性があるとも報じられている。パウエル自身も候補となり得るが、政治的緊張を踏まえれば流動的だ。

今日、何を見るか

今日のFOMCで市場を動かしうる要因は、金利の数字ではなくパウエルの言葉のトーンかもしれない。「戦争の影響は一時的」と言うか、「インフレリスクが高まった」と言うか——その一言が利下げ期待の時期を大きく前後させる。

さらに、自らの立場を表明する最後の機会の一つにおいて、ウォーシュ新体制への橋渡しをいかに描くか、「ポスト・パウエル時代」の予告編としても注目される。

前の記事トランプ政権クリプト政策の行方:立法待たずに進むワシントンの「地ならし」