「魔法の治療装置」を約束? トランプの“Medbed”投稿に「正気じゃない」と批判殺到

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Brian Jason / Shutterstock.com

トランプ大統領が週末にTruth Socialへ投稿した1本の動画が、SNS上で大きな議論を呼んでいる。動画の中でトランプは、全国民に「Medbed(メッドベッド)」カードを配布し、誰もが最先端の医療施設と一流医師の治療を受けられるようになると宣言。「国民の健康と体力を完全な状態に戻す」ために設計された病院へのアクセスが可能になるとし、「アメリカ医療の新時代の幕開けだ」と語っている。

映像はFOXニュースの番組を模した体裁で、司会を務めているのは義理の娘ララ・トランプ。トランプの発言とともに近未来的な医療施設の映像や医師のコメントが挿入されている。しかし実際に放送された事実は確認されておらず、SNSではAI技術によるフェイク動画ではないかとの指摘が相次いでいる。

「Medbed」とは、あらゆる病を治す“夢の装置”が存在すると主張する陰謀論で、2022年前後にQアノンの支持者らの間で急速に広まったとされる。主張の内容は多岐にわたり、老化の進行を止める、失われた手足を再生する、果ては「宇宙人の技術とつながっている」といった主張まで飛び交った。

中には、ジョン・F・ケネディはMedbedの力で若々しく生きているといった荒唐無稽な説まで流布。デイリービーストによると、信奉者の一部は、トランプがこの装置の存在を知っており、それを一般公開する日を望んでいた。

Medbedブームに便乗し、疑わしい企業が“装置”を名乗る機器を販売する事例も相次いだ。そのうちの一つ、「テスラ・バイオヒーリング」という企業は「生命力エネルギーを注入する」とうたう装置を販売したり、各地のモーテルで「治癒体験」セッションを提供していた。

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BBCの潜入取材によれば、家庭用機器は最大19,999ドルで販売され、モーテルの“治療室”の利用料は1時間160ドル。木箱に入ったキャニスター状の装置の近くで1時間ベッドに横たわり、その前後で金属製の箱に指を差し込み「エネルギーの状態」を測定するという。体験後の測定値について、記者は「”案の定”、私のエネルギー値は上昇していた」と皮肉を込めて報告している。キャニスターの中身を確認したところ、単なるコンクリートのような塊だったという証言もある。

また、デイリービーストは、この企業のマーケティング担当者がQアノン関連のMedbedチャットに参加し、積極的に宣伝活動をしていたと報じている。

トランプは過去にも虚偽の主張やパロディを拡散してきたが、今回は人々の命や健康に直結する内容だけに、批判のトーンも厳しい。

SNSには、「彼がコロナについて嘘をついたせいで多くの人が命を落とした。それなのに、また同じことをするチャンスを与えている」と憤る声が寄せられたほか、「癌などの病気を本気で治せると信じてしまう人がいる。これは残念で、胸が張り裂ける思いだ」と深刻な影響を懸念する声もある。

また、「Medbedのような荒唐無稽な話を大統領が口にするなんて、正気の沙汰ではない」「明らかに現実認識を失っている。まるで認知症患者のようだ」といった辛辣なコメントも寄せられている。