7月11日に公開されたジェームズ・ガン監督の最新作『スーパーマン』。さっそくSNSでは2013年のザック・スナイダー監督作『マン・オブ・スティール』を上回るかどうか、議論が白熱している。
新作推しのファンからは以下のようなコメントが寄せられている。
「他と比べ物にならない。あなたも劇場を出る頃には、優しくて親切な人になるだろう」
「原作に忠実だったのもコミックファンの私にとっては高得点」
「ザック版は暗くて荒々しくて、あまりコミックに基づいていなかったけど、ガン版は明るくてコミックのキャラに忠実。スーパーマンのような、現代の世界に必要なヒーローが毎日いるんだっていう希望を与えてくれる」
多くのファンはガン監督の描くスーパーマンにオリジナルへの回帰と、インスピレーションの力を見出したようだ。
もちろん『マン・オブ・スティール』ファンも黙っていない。
「マン・オブ・スティールの方がよっぽど共感できる部分が多くて、脚本もずっと良い。スーパーマンが地球上でいかに疎外されているかが描かれていて、すごく共感できる」とストーリーの深さを評価する声。「程よくダークでエッジが効いた作品だった。スーパーマンは悪くなかったが、あまり好きになれなかった」、「ストーリー(クリストファー・ノーラン)、アクションシーン、ビジュアル、音楽(ハンス・ジマー)、撮影、脚本(デヴィッド・S・ゴイヤー)のすべてが優れている」など全面的に支持する意見も。新作を「まるでZ世代やTikTok視聴者向けに作られたような作品」、さらに「マン・オブ・スティールはスーパーウォークよりも優れている」といったイデオロギー的な要素を批判するコメントも投稿されている。
そもそも、比べるものじゃない派も。
「60年代のキャンピーなバットマンと、ノーランの超リアルな『ダークナイト』を比べるようなもの。感性も美学もまったくの別物。比較する意味はないよ」
「ストーリー、映像、テンポの良さなら『スーパーマン』。アクションシーンとヴィランなら『マン・オブ・スティール』」
「どっちもそれぞれの良さがある。スナイダーバースはDCユニバースに対するダークなアプローチだったし、『スーパーマン』は全く違う方向性で、アートスタイルや色調などが大きく異なっている」
原作回帰については、映画評論家の面々も好感触を示している。
ヴァニティ・フェアの主任評論家、リチャード・ローソンは、『マン・オブ・スティール』について、「ハリウッドが観客に重くて深刻なスーパーマン像を受け入れる”感情的なキャパシティ”があると信じていた」時代の「力みすぎて重苦い」、「決して洗練されたものではない」と辛口。
一方の新作は「真逆のアプローチ」で、「柔軟で軽やか、そして何より楽しい」。リチャード・ドナー監督(1978年版)以来、初めて“主人公にふさわしいバランス”を見出したと称賛。「コミックらしさをあえて大切にすることこそが重要。スーパーマン本来の文脈を受け入れることが、彼を正しく描く最良の方法だった。DCはもっと早く気づくべきだった」と苦言混じりの賛辞を並べた。
ニューヨークタイムズの映画評論家、アリッサ・ウィルキンソンは、「反ユダヤ主義やナチスによる抑圧、経済恐慌に苦しむ人々の絶望を痛感し、救いを求める人々の声を知る」ふたりのユダヤ人青年によって1938年に生み出されたスーパーマンは「筋金入りの反ファシスト」。その本来の姿を描くために「彼のもつイデオロギー的ルーツに立ち返る必要があった」と主張。「ガン監督のスーパーマン神話の魅力的な解釈は成功している。スーパーヒーロー映画にうんざりしていたある批評家さえも心を動かされたほど」と評価した。
スーパーヒーロー映画が飽和状態にある今、ガン監督のスーパーマンは「ヒーローもの疲れ」の「処方箋」となるのか。一部のファンは希望を見出したようでもある。小難しい議論はさておき、新スーパーマン像が心にどう響くか、劇場に足を運んで見てはいかがだろうか。