トランプ大統領と対立を深めるイーロン・マスク氏は5日、Xへの投稿で、エプスタイン・ファイルが公開されないのは、トランプ氏がその中に含まれているからだと主張した。
「大きな爆弾を投下する時が来た。エプスタイン・ファイルにトランプが載っている。それが公にされない真の理由だ」
エプスタイン・ファイルとは、2019年にマンハッタンの勾留施設で自殺した小児性愛者ジェフリー・エプスタインおよび、その犯罪を手助けし現在服役中のギレーヌ・マクスウェルに関する未公開の捜査資料を指す。今年2月、米司法省は第一弾としてエプスタイン氏所有のプライベートジェットのフライトログや手帳を一部黒塗りで公開したが、既に知られている資料が中心だったため批判を招いた。今後の公開スケジュールは明らかにされていない。なお、マスク氏が実際にファイルへアクセスしたかは不明だが、投稿内容からはトランプ氏が何らかの形で犯罪に関与していた可能性を示唆している。
トランプ氏とエプスタイン、そして故ロバート・マクスウェルの娘ギレーヌ・マクスウェルとの関係は1980年代後半に始まり、2004年にフロリダの不動産取得を巡って対立するまで続いたとされる。2002年、トランプ氏はニューヨーク・マガジンの取材でエプスタインと15年来の知人であることを認めている。2000年にメラニア氏を含む4人でダブルデートした写真や、1992年にマール・ア・ラーゴで開催されたパーティーでの親しげな様子を捉えたNBCニュースの映像などがオンラインで広く流通している。
作家マイケル・ウォルフ氏によれば、二人は「金、女性、地位という時代の体現者」であり、友人でありながら女性を巡って激しく競い合っていたという。二人の密接な関係を示すエピソードは、これまで幾度となく報じられてきた。

エプスタインの黒手帳
2015年、ジャーナリストのニック・ブライアント氏がウェブサイト「GAWKER」で公開したエプスタインのアドレス帳には、97ページにわたり1,571人の名前と5,000件の電話番号、数千件のメールや住所が記載されていた。トランプ氏の連絡先は十数件あり、丸で囲まれていたが、その意味は不明である。丸囲みされていたのは約50人だった。
共通のガールフレンド
『アメリカン・コンプロマート』(2021年)の著者クレイグ・アンガーによると、トランプ氏とエプスタインには同時期に関係を持った女性が複数いた。
その一人、ロシア人モデルのアンナ・マロヴァ氏は、1990年代前半にロシアのミスコンで2位となった後、米国に移住しトランプ氏と出会った。当時トランプ氏は2人目の妻マーラ・メイプルズ氏と婚姻中だったが、マロヴァ氏をニューヨークのトランプタワーの一室に住まわせていたという。一方でマロヴァ氏は「ロリータ・エクスプレス」と呼ばれるエプスタインのプライベートジェットで、同氏が所有するリトル・セント・ジェームズ島を訪れていた。フライトログによれば、マクスウェルや英王室のアンドルー王子が同乗していたこともあった。
ロンドンのモデル、アヌスカ・デ・ゲオルギウ氏もトランプ氏がトランプタワーに住まわせた女性の一人で、2019年のNBCニュースの取材で、当時エプスタインの各国の家に連れて行かれ性的虐待を受けたと証言している。
互いの家を行き来
エプスタインはフロリダ・パームビーチ地区に住宅を所有し、トランプ氏のマール・ア・ラーゴを頻繁に訪れていたとされる。ワシントン・ポストによると、前述のNBCニュース映像はNFLのチアリーダーを集めたパーティーで、トランプ特集の取材のために撮影されたものだった。
同年、トランプ氏の要請でマール・ア・ラーゴで「カレンダーガール」コンテストが開催されたが、参加女性28人に対し、ゲストはトランプ氏とエプスタインの2人だけだったこともあった。オーガナイザーの男性はニューヨーク・タイムズの取材で、「ドナルド、これはVIPが集まるパーティーのはずだ。まさか、それが君とエプスタインなのか?」と尋ねたことを振り返っている。
ニューヨーク・マガジンによれば、トランプ氏は2003年にエプスタインのニューヨークの自宅で食事を共にしていた。ピープル誌は「ロリータ・エクスプレス」のフライトログから、トランプ氏が同機に7回搭乗したと報じている。
メラニア夫人を紹介?
2017年、作家マイケル・ウォルフ氏のインタビューを受けたエプスタインは、「メラニア夫人をトランプ氏に紹介したのは自分だ」と主張し、「彼が彼女と初めて寝たのは私の飛行機だった」と語ったという。
ただしこの主張の真偽は不明である。メラニア夫人は昨年9月に発売した自伝でトランプ氏とニューヨークのパーティーで出会ったエピソードを記しているが、エプスタインには一切触れていない。パーティーは「メトロポリタン・モデル」共同オーナーのパオロ・ザンポリ氏が主催したものとしている。
マール・ア・ラーゴの従業員からエプスタインのマッサージ係、被害者へ
エプスタインや調達役とされるマクスウェルは、マッサージのアルバイトと称して少女たちを集め、さらにその友人を紹介させていた。
先月自ら命を絶ったバージニア・ロバーツ・ジュフレ氏がマクスウェル氏に誘われたのは2000年。当時17歳で、マール・ア・ラーゴでロッカールーム係のアルバイトをしていた。ジュフレ氏の父親もそこでメンテナンスマネージャーを務めていたとされる。ジュフレ氏はエプスタインによる性的人身売買の被害を告発し、2021年にはアンドルー王子から性暴行を受けたとしてニューヨーク連邦裁判所に訴訟を提起した。
消えた写真
クレイグ・アンガー氏は『アメリカン・コンプロマート』の中で、トランプ氏の痴態をさらす未公開写真が存在すると記している。
エプスタインの関係者から伝え聞いたという写真は2枚あり、1枚目はトランプ氏がトップレスの若い女性たちと一緒に写っているもの、もう1枚はズボンの股間部分が濡れたトランプ氏を2人の少女が指さして笑っているものだという。この説明はマイケル・ウォルフ氏が昨年11月のポッドキャストで「自ら見た」と主張した内容と一致する。ウォルフ氏によれば、エプスタインは写真を金庫に保管しており、2019年の家宅捜索でFBIが押収した可能性があるという。
司法省は今年2月、このときの押収品リストを公表したが、そこには数十台の録画機材やパソコン、ハードドライブ、メモリースティックが含まれていた。また「少女ヌードブック」とラベル付けされたCDや写真アルバム、マッサージ台、手錠や鞭も押収されている。
エプスタインは自宅に有名人を招き、少女たちと性行為をする様子を隠し撮りしていたと噂されている。
これが確定的に報じられたことはないが、CBSニュースのプロデューサー、アイラ・ローゼン氏は2021年の回顧録で、マクスウェルにトランプ氏とクリントン元大統領のテープの存在を認めさせたと明かしている。
トランプ氏とエプスタインの関係は2004年に終焉を迎えた。原因はパームビーチの邸宅購入を巡り、トランプ氏がエプスタインを出し抜いたことだとされる。トランプ氏はエプスタインから物件のリノベーションについて助言を求められていたが、自ら購入し、数年後に2倍以上の値段で売却した。この間、一度も住むことはなかった。
翌年の2005年から、エプスタインに対してパームビーチ警察が捜査を開始した。エプスタインは物件の問題を訴訟沙汰にすると脅かしたことから、トランプ氏が警察に働きかけたと信じていたという。