「食とリテール」NYブルックリンに日本カルチャーの新たな発信地がオープン

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若者で賑わうブルックリンのグリーンポイントに、日本から異業種3社が集結。ダイニングとリテールが組み合わさった新施設「50 Norman」オープンした。

50 ノーマン(住所:50 Norman Ave)に入るのは、西麻布のジャパニーズ・フレンチレストラン「House」(ハウス)と、表参道と銀座にあるライフスタイルショップ「CIBONE」(シボネ)、明治四年創業の老舗水産仲卸「尾粂」(おくめ)。いずれもニューヨーク初進出。

Photo by MashupReporter

プロジェクトは、ニューヨークでの出店を目指して数年前に渡米した、Houseのオーナーシェフ、谷祐二さんの声かけで始まったという。当初、別のエリアでの出店計画があり、店舗契約まで進めていたが、パンデミックで中断。空いていた50 Normanで「おもしろい仲間と何かできないか」といったデザインファームとの話し合いから、アイデアが発展。人的繋がりを通じて参加を呼びかけ、業態に縛られない日本のカルチャーを発信するユニークな商業スペースが誕生した。

Houseはカウンター8席のみで、日本の食材とフレンチの技術を使った料理を提供する。メニューは、7皿のおまかせコースメニューで、完全予約制、価格は140ドルほどだという。10月22日にオープンする。

Houseのオーナーシェフ、谷祐二さん
店舗の奥にあるジャパニーズ・フレンチレストラン「House Brooklyn」のカウンター。10月22日にオープンを予定。

CIBONEと並び、日本で「ディーン&デルーカ」を手がけるウェルカムグループの代表、横川正紀さんは、コロナで世界が大きなターニングポイントを迎えるなか、「次の動きのきっかけ」を作りたかったと進出の期待を語った。

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陳列された品々は、食器や花瓶、食まわりのアイテムが中心。キュレーションのコンセプトは、「未来のアンティーク、未来のクラシックになるもの」だといい、日本の優れた作家や職人の作品、活動を世界に届けるプラットフォームにしていきたいと語った。Houseの谷シェフとは、最初に外食事業を手がけた時以来の関係だという。

「CIBONE」を手がけるウェルカムグループの代表、横川正紀さん。店内のギャラリースペースでは、新進気鋭の日本の作家の作品をフューチャーしていく。
個性豊かな一点ものの商品も数多く販売されている。

創業から151年を迎える尾粂は、国産天然素材のみを使用したオーガニックのオーダーメイド「だしパック」を提供。素材は約30種類を用意。注文に応じてその場で粉砕し、オリジナルブレンドの世界で一つだけのだしパックを作る。粉砕作業はガラス張りの「ラボ」で実施するなど、プレゼンテーションにも工夫が凝らされている。

それぞれシリアルナンバーを割り当て、再注文も容易。16日からはオンライン販売も開始する。代表の加納史敏さんは、「うま味」が浸透し始めた米国では、だしへの関心が高まるだろうと期待を示し、「需要を創っていける」と意気込みを語った。卸売りの展開にも力を入れる計画で、すでにシェフたちから良い反応を得ているという。

明治4年創業、尾粂の5代目の代表を務める加納史敏さん
オープン前に開催されたレセプションには、多くのニューヨーカーが詰め掛け、関心の高さが伺えた。