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「人質」に利用される危険性。ロシアが米女子バスケ選手を大麻所持で拘束

米国の女子プロバスケットボール選手ブリトニー・グライナー(Brittney Griner)氏が、モスクワの空港で、大麻から抽出される「ハシシオイル」を持ち込んだとして、ロシア当局に拘束されていることが分かった。「有名人の人質」として利用される可能性があるなど、軍事専門家から懸念する声が上がっている。

イヴリン・ファーカス(Evelyn Farkas)元米国防長官補佐官補(ロシア・ウクライナ担当)はYahoo Sportsに、米国が釈放を求めた場合、ロシア側は「何らかの条件を提示してくるだろう」と語った。捕虜の交換を含め、「何かをするよう求めたり、また、しないよう要求するなど暗黙の脅迫、または恐喝として利用する可能性がある」と危険性を指摘した。

ブリンケン米国務長官は6日、訪問先のモルドバで会見を開き、プライバシーを考慮し、多くの情報は公開できないとしつつ、「ロシアを含め、拘束された国がどこであれ、可能な限りの支援を提供する」と述べた。グライナー氏以外にも、ロシアで拘束されている米国人について調査を行っていることを明らかにした。

オフはロシアでプレー

リオデジャネイロ五輪と東京五輪大会で金メダルを獲得し、米女子プロバスケ(WNBA)の「フェニックス・マーキュリー」で活躍するグライナー氏は、オフシーズンの間、ロシアのチームでプレーしている。Yahooによると、ロシアやトルコでは、トップ選手の契約金は100万ドルで、WNBAよりも5倍近く高い。多くの女子サッカー選手は給与を補うため、海外でプレーするという。

インタファクス通信は、ニューヨークからモスクワのシェレメチェボ国際空港に到着した際、グライナー氏の所持品からマリファナが発見されたと報じた。

ロシア当局が公開した動画では、麻薬探知犬がグライナー氏の荷物に近づく姿や、荷物検査を受けた後、担当者が所持品の一部を封筒に入れる様子が撮影されている。

ロシア税関は5日、ベイプの中から「大麻オイル」が確認されたと発表。薬物密輸の容疑で、捜査を開始すると発表した。有罪となった場合、最大10年の禁固刑が科せられる可能性があるという。

拘束された日時は、明らかにされていない。グライナー氏のインスタグラムは、先月5日の投稿が最後となっている。

妻のシェリー・グライナー氏は5日、Instagramに「人生で最悪の瞬間」だと述べ、無事帰国できるよう懸命に取り組んでいるとメッセージを投稿した。

人権に懸念の声

グライナー氏は、クイアを公表している。ウクライナへの軍事侵攻で日露間の緊張も高まっており、拘束期間が長期化することに、懸念する声が上がった。

LGBTQの人権活動家シャーロット・クライマー氏は「ロシアは主要国の中で、最も反LGBTQ的な法律を施行している。彼女が直面している危機は決して誇張ではない」と述べた。また、彼女が海外でプレーする必要があるのは、女子のスポーツ選手の給与が低すぎるからだと指摘している。

テレビ番組の司会者アドリエンヌ・ローレンス氏は、「バイデン政権を苦境に立たせ、われわれの国をさらに分断させる」とロシアのねらいを指摘。黒人で性別不一致、レズビアンのグライナー氏は、「保守派やロシア正教、白人至上主義者、主戦論者らが、嫌っているものだ」とし、「最も恐ろしい状況に置かれている」と語った。

グライナー氏の地元の政治家シーラ・ジャクソン・リー上院議員(民主党・テキサス州)は5日、「この戦争中にモスクワの拘置所にいることがいかに危険か。彼女のいるべき場所ではない」と述べ、早期解放を求めた。

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