ジャック・ティシェイラ容疑者とは?米機密文書流出で逮捕された21歳州兵

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国防総省

政府の機密情報がSNSに流出した問題で、FBIは13日、マサチューセッツ州の州兵のメンバー、ジャック・ティシェイラ(Jack Teixeira)容疑者(21)を逮捕した。

ボストンのテレビ局がシェアした動画には、武装した捜査官らにティシェイラ容疑者が投降する姿が撮影されている。拘束時に抵抗する様子は見せなかった。

メリック・ガーランド司法長官は同日、ティシェイラ容疑者を国防機密情報の不正な持ち出し、保持、送信の疑いで逮捕したとし、ボストンの連邦裁判所に出廷する予定だと発表した。

情報流出は、先週ニューヨークタイムズが第一報を報じ、それ以来各紙によってさまざまな内容が伝えられている。

出回った資料は100を超えるとされ、ウクライナから中東、中国に至る、米国の国家安全保障上の機密情報が含まれる。ウクライナに関しては、国防総省による同国の防空能力の評価や、兵器の納入、部隊の戦力、その他の計画を示した図表、ロシアとウクライナ軍の戦死者数を示すものなどが報じられている。タイムズは当初、ロシアの仕業とするウクライナ高官の見解を伝えていた。

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ジャック・ティシェイラ容疑者とは?

複数メディアの報道によると、マサチューセッツ州南東部の町、ノースダイトン在住のティシェイラ容疑者は、マサチューセッツ州空軍の第102情報飛行隊のメンバーで、7月に一等空兵に昇格していた。同じく州南東部のケープコッドにあるオーティス航空州兵基地に勤務していた。ホームページでは、同部隊の任務は「訓練された経験豊富な航空兵とともに、世界中に精密情報および指揮統制を提供すること」とある。タイムズによると、ティシェイラ容疑者は、軍の通信ネットワークを維持する役割を担う「サイバー・トランスポート・システム・ジャーニーマン」と呼ばれる職業訓練を受けていた。応募者には、身元調査が義務付けられているが、容疑者がどのようなセキュリティ・クリアランスを付与されていたかは不明だとしている。

機密文書は、3月にDiscordという名のビデオゲーマーに人気のチャットプラットフォームにティシェイラ容疑者が投稿し、その後、テレグラムや4chanに出回ったと見られている。

ワシントンポスト紙によると、ティシェイラ容疑者は、Discord で、銃や軍の装備品、神への愛といった共通の趣向を持つ約20人ほどの招待制のグループを運営し、メンバーから「OG」と呼ばれていた。政府が一般人から隠している秘密を知っていると主張しており、メンバーの話によると、グループの長老的存在で尊敬を集めていた。

ティシェイラ容疑者は当初、「軍事基地」での仕事から持ち帰った機密情報文書を入力し直したものに、注釈をつけるなどして共有していた。この中には高位の政治指導者の居場所や軍の戦術の最新情報、地政学的な分析、外国政府による選挙妨害の取り組みに関する洞察などが含まれていた。しかし、手間をかけた文書に対するメンバーの反応が悪いことから、文書そのものを撮影した写真を投稿するようになったという。

なお同紙は、まだ他に出回っていない、機密文書が写されたおよそ300枚の写真を確認したとしている。

動機は?

犯行の動機は明らかではないが、OGはグループメンバーに、世界情勢や政府の秘密工作といった内容の説教をすることがあった。ワシントンポスト紙の取材に応じたメンバーは、「私たちを最新の状態に保ちたい」と考えていて、軍内部の知識が、自分たちを取り巻く問題のある世界から、他の人々を保護することになると考えているようだったと話した。

一方、同紙が確認したビデオの中には、射撃場で安全メガネと耳当てをつけ、カメラに向かって反ユダヤ的な中傷発言を連発した後、標的に向かってライフルを撃つ様子を撮影したものもあった。

一部の専門家からは、右翼の過激主義の影響を指摘する声が上がっている。ヘイトと極右過激主義の活動を監視する「Global Project Against Hate and Extremism (GPAHE)」は声明で、ワシントンポスト紙の記事を引用し、「極右、人種差別主義者、反政府勢力が米軍に浸透することが危険な理由は無数にある」とした上で、政府はこれらの脅威を深刻に受け止めなければならないと訴えた。