先月のアカデミー賞授賞式での「ビンタ事件」をめぐり、ベテラン俳優が、ウィル・スミス(53)はオスカー像を返上すべきだと訴えた。
そう主張しているのは、映画芸術科学アカデミーの会員で、映画「マン・オブ・スティール」やドラマ「ブラックリスト」などに出演中のハリー・レニックス(57)。9日、米エンタメ誌Varietyに寄せた論説で、スミスは行動には責任が伴うことを知る必要があり、賞を返上するのが最善だ、と述べた。
レニックスはコラムで、「スミスは金のトロフィーを速達便でアカデミーに送り返し、公に次のような声明を出すべきだ:『賞に込められた94年間の栄光への敬意として、私がそれを受け取る価値のある者だとはとても思えない』」と、ウィル・スミスが出すべきコメントまで細かく指導。
続けて「平手打ち騒動のいざこざで最も腹立たしいのは、暴力行為から1時間もしないうちに、彼が「ドリームプラン」(King Richard)で(主演男優賞を)受賞した後の奇妙なスピーチで、大きな力の影響を口にしたことだ。そして同じく衝撃的だったのは、スミスを会場から追い出さなかったアカデミーの判断だ」と、アカデミーに対しても批判を展開した。
受賞スピーチの冒頭で「この瞬間、私は神が求めるものによって圧倒されている」と話した点に触れ、「神の意思になんらかの形で服従していると言葉に表すことで、スミスは個人的に責任を負うことを放棄した」と指摘した。
また、今回のビンタ事件は、アカデミー賞の「名声」をも損なったと非難。受賞した際、会場でスタンディングオベーションが巻き起こったことに触れ、「映画芸術科学アカデミーに塗られた泥は、そう簡単には拭い去れない。スミスが自ら主演男優賞を返上することが、騒動を正当化する唯一の希望だ」と締めくくった。
編集者が反論
Varietyのシニア・アワード・エディター、クレイトン・デイビス氏は、レニックスの見解には賛成できないと異議を唱えた。
デイビス氏は、ウィル・スミスはオスカー像を汚していないと主張。さらに性犯罪で有罪判決を受けた受賞者らが、賞を返上していない点を指摘した。
I’d like to say that I vehemently DISAGREE with this entire notion.
— Clayton Davis – Stand with 🇺🇦 (@ByClaytonDavis) April 9, 2022
Will Smith didn’t bring “shame” upon the statuette and to suggest otherwise when CONVICTED RAPISTS were bestowed the same statuette AFTER pleading guilty for their crimes, is an exercise in severely BAD TAKES. https://t.co/gunJKYWQQZ
「チャイナタウン」や「ローズマリーの赤ちゃん」で知られるロマン・ポランスキー監督は、1977年に13歳の少女と違法に性的関係を持ったとして有罪となったにも関わらず、2003年のアカデミー賞では、映画「戦場のピアニスト」で監督賞を受賞した。2018年に除名されるまで、映画芸術科学アカデミーの会員であり続けた。
2020年に強姦罪などで有罪となった映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインもアカデミーを追放されたが、1999年に「恋におちたシェイクスピア」で獲得した作品賞は剥奪されていない。
「ビンタ事件」とは
3月27日の第94回アカデミー賞授賞式でプレゼンターを務めたクリス・ロックは、ウィル・スミスの妻で女優のジェイダ・ピンケット・スミス(50)の坊主頭をからかい、「ジェイダ、愛してるよ。『GIジェーン2』を見るのが待ちきれないな」とジョークを飛ばした。ジェイダは自己免疫疾患による脱毛症を公表しているが、このジョークにスミスが憤慨し、ステージに上がってロックに平手打ちを食らわせた。その模様は一部始終が生中継された。
その後、ウィル・スミスは、映画「ドリームプラン」のリチャード・ウィリアムズ役で主演男優賞を受賞。同作では、ビーナス&セリーナ・ウィリアムズ姉妹を女子テニス界のレジェンドに育てあげた父親を好演した。受賞スピーチで、アカデミーや他の候補者に謝罪を述べ、翌日にはインスタグラムで、クリス・ロックにも謝罪を表明した。
4月1日、ウィル・スミスは映画芸術科学アカデミーに自ら退会を申し出、受理されたが、同団体の理事会は8日、ウィル・スミスに対し、今後10年間、アカデミー関連の全イベントへの出席禁止処分を決定した。処分決定後、メディアに宛てた声明で、「アカデミーの決定を受け入れ、尊重する」と発表した。