「トランプ氏はゆすりの被害者」ポルノ女優口止め料疑惑、弁護士が真っ向否定

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ポルノ女優に支払われた口止め料をめぐって、起訴が近いと報じられたドナルド・トランプ前大統領。元大統領が刑事訴追されるかもしれないという前代未聞の事態に、弁護士がテレビに出演し反論を繰り広げた。

ニューヨークタイムズは先週、約5年間にわたる調査を行ってきたマンハッタン地検が、トランプ氏に対して、大陪審の前で証言する機会を与えたと伝えた。検事が最終的に起訴を求めずに証言機会を提供する例はまれで、訴追が近い合図だという。

そうしたなか、トランプ氏の弁護士、ジョー・タコピナ氏は13日、朝の情報番組に出演。トランプ氏側の主張を展開した。

タコピナ氏は、大陪審の証言に参加する計画はない、とマンハッタン地検の提案に応じない意向を表明。その後司会者が用意した質問を遮り、口止め料は、選挙活動とは関係ないと主張した。

タコピナ氏の主張は、トランプ氏は不倫はしていないが、自分や家族に恥ずかしい思いをさせないために「ゆすり」に応じざるをえなかったというもの。「仮に彼がやったと仮定しよう。これはれっきとしたゆすりであり、いつから恐喝の被害者が訴追されるようになったのかわからない」と、トランプ氏はむしろ被害者だとした。

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一方、「トランプ氏はこの不倫を真っ向から否定している」と加え、「でも彼は支払わなければならなかった。彼に公に恥辱を与えるような疑惑が生じそうだったからだ」と続けた。

2016年の選挙戦終盤、10年前に肉体関係を持ったと主張するポルノ女優のストーミー・ダニエルズに支払われた13万ドルについて、マンハッタン地検は、トランプ氏を財務の虚偽記載の罪で告発するとみられ、さらに選挙資金法違反を訴える可能性があると報じられている。前者は軽罪だが、後者は「犯罪を犯す、あるいは隠す意図」が立証されれば、重罪に問われるという。

実際にダニエルズ氏に支払ったのは当時弁護士だったマイケル・コーエン氏で、トランプ氏から後に分割で払い戻しを受けていた。コーエン氏は2018年に、支払いが選挙資金法に違反したことを認め、その他複数の罪で有罪となり、実刑を言い渡された。検察側は裁判で、トランプ氏は、コーエン氏への支払いが法律業務と無関係であるにもかかわらず、弁護士費用として「偽って」計上したと指摘していた。

タコピナ氏は虚偽記載の疑惑も否定した上、「彼の個人的な資金から支払われた。選挙運動への寄付ではない」と主張。コーエン氏については、犯罪でないものに有罪答弁を行なったとした。「彼(トランプ氏)は、自分や家族、幼い息子に恥ずかしい思いをさせる虚偽の情報が出るのを防ぐために、私費で支払った」と述べ、「正義が勝ることを期待している。起訴されるべきではない」と語った。

なお一部の専門家からは以前、トランプ氏の最善の防衛策は、不倫を潔く認め、日頃から金で口止めをしていたと主張することだと指摘する声があった。(トランプ氏は、元プレイボーイモデルのカレン・マクドゥーガル氏にも支払いをしていた)

元連邦検事のレナート・マリオッティ氏は2018年、Law & Crimeの取材に「トランプの最善の戦略は、自分が日常的に女性に貢いでいて、目的は妻や他の家族に与える恥辱を避けるためだったと言うことだ」と主張。「その支払いが、実際に選挙運動に関連したかどうかを争うことが目的だ。検察が証明しなければならないことだ」と述べた。

ただし、こうした方法を採って不倫の常習者だったと認めれば、それこそメラニア夫人に恥ずかしい思いをさせることになる。トランプ氏本人は訴追報道のあった9日、SNSで「私はまったく誤ったことはしておらず、ストーミー・ダニエルズと不倫をしたこともないし、不倫をしたいとも思ったことはない」と宣言。「これは政治的な魔女狩りで、有力候補を落とそうとするものだ」と反論していた。