トランプ大統領 お別れスピーチ バイデン氏に触れず

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選挙後、敗北を明確に認めてこなかったトランプ大統領は、明日の退任を控え、お別れのスピーチを発表した。約20分間の演説で、トランプ氏は、ホワイトハウスに来た目的以上のことを成し遂げたと述べるなど、成果を強調した。バイデン次期大統領の名前は最後まで口にしなかった。

トランプ氏は冒頭、「第45代米国大統領を終えるにあたり、われわれがともに成し遂げたことを真に誇りに思っている」と述べ、「今週、われわれは新政権を迎える。新政権が米国の安全と繁栄を保つことに成功することを祈っている。彼らの幸福を祈るとともに、運に恵まれることを望んでいる」と語った。

6日の議事堂襲撃事件について「すべての米国民が、議事堂の襲撃に恐怖を覚えた。政治的暴力は、国民が大切にするものすべてに対する攻撃だ」と非難。「決して許されてはならない」と述べ、「われわれは今まで以上に、共有する価値観のもとに団結し、党派的な恨みを超えて運命の共同体を築かなければならない」と語った。

議事堂襲撃事件について、米下院は13日、暴動を扇動したとして、トランプ氏を弾劾訴追する決議案を可決。トランプ氏は米史上初めて2回の弾劾訴追を受けた大統領となった。

トランプ氏は続けて「全国の数百万人の勤勉な愛国者とともに、われわれは米国史上最も偉大な政治運動を築いた」と主張。「また世界で史上最も偉大な経済を築いた。これはアメリカ第一主義であり、全員がアメリカを再び偉大にすることを望んでいるからだ」と語った。さらに「われわれのアジェンダは、右か左かではなく、共和党か民主党でもない。国家の利益についてであり、つまり国民全体ということだ」と述べた。

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「米国史上最大の減税と改正を通過させた」「かつての政権が成しえなかった、雇用を阻害する規制を廃止した」「最悪のTPP、不可能なパリ協定から脱退した」など、政権の取り組みを述べ、さらに「とても大切なことだが、われわれは中国に歴史的、記念碑的な関税を課した」と語った。

一方、「署名したインクが乾かないうちに、われわれと世界は中国ウイルスに襲われた」と述べ、新型コロナウイルスによって「異なる方向へと行かざるを得なかった」と語った。

ワクチンについて「記録的な速さで1つではなく2つも生産した」とアピール。「医療の奇跡」を起こしたとし、他の政権であれば「最大で10年」かかるかもしれないが、「われわれは9カ月でやってのけた」と述べた。

この日、米国の新型コロナウイルスの累計死者数は40万人を突破。バイデン次期大統領は、首都ワシントンで追悼式を行なった。

トランプ氏はこのほか、最高裁判事を3人送り込んだことや、国境の壁の建設に言及。「国民の願いに応え、米国史上最も厳重な国境を達成した」と述べた。

外交面について、アメリカのリーダーシップを回復し、「世界はわれわれを再び尊敬している」と主張。「同盟関係を活性化し、世界中の国々と結束して、中国に立ち向かった」と語った。

また「大胆な外交と現実主義」により、一連の歴史的な中東和平協定を達成したと述べるとともに、「新たな戦争を始めなかった数十年ぶりの大統領であることを誇りにしている」と語った。

一方、退任にあたり、米国の「貴重な遺産」を脅かす危険について考えてきたと述べた上で、「遺産の中核にあるものは、表現の自由、言論の自由、オープンな討論に対する揺るぎない信念だ」と説明。「自由でオープンな議論を閉鎖するのは、われわれのコアバリューと伝統を犯すものだ」と述べた。

議事堂襲撃事件後、ツイッターとフェイスブックは、さらなる暴動を扇動する恐れがあるとして、トランプ氏のアカウントを停止した。これに続き、スナップチャット、Twitch、Shopifyもトランプ氏またはキャンペーンの利用を禁止。メルマガ配信サービス企業もトランプキャンペーンのアカウントを停止した。

トランプ氏はツイッターの停止処分を受け、大統領専用アカウントを通じて「ツイッターは言論の自由の禁止をますます進めている。今晩、ツイッターの従業員らは、民主党と急進左派と協力して、私を黙らせようとしてアカウントを削除した」となどと反発していた。

トランプ氏は今後について「われわれが始めたムーブメントはたったいま始まったばかりということを知っておいてほしい」と述べ「国家が市民に奉仕しなければならないという思いは、衰えるどころか、日ごとに強くなるばかりだ」と思いを語った。