「ザ・ホエール」絶好調、インディーズ映画に希望の光

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先週末(12月9日~12月11日)の全米ボックスオフィスランキングでは、前週と変わらず1位『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』、2位『バイオレント・ナイト』、ファミリー層向け作品がないことが助けとなり、3位はディズニーの『ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界』となった。

全作品を合わせた興行収入は約3,500万ドルで、今年2番目に低い成績だった。

注目は、「マザー!」以来5年ぶりの新作となるダーレン・アロノフスキーの新作「ザ・ホエール」(The Whale)。「ハムナプトラ」シリーズのブレンダン・フレイザーが、疎遠になった娘と再会を試みる肥満の教師を好演。ヴェネチア国際映画祭で上映されて以来、批評家から高い評価を得ている。製作はA24。

ニューヨークとロサンゼルスの6館からの限定上映。全ての上映回が完売となり、36万ドルを記録した。限定作品の中で、今年最高のヒットとなった。

オープニングの1館あたりの平均興収は6万ドルで、今年最もヒットしたA24のインディ映画「Everything, Everywhere All At Once」(5万ドル)を超えた。アートハウス系作品の苦戦が続く中、久々に明るい話題が舞い込んだ。

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12月21日から約500館の一般劇場でも拡大公開を予定している。週末のランキングは14位だが、今週7位に入ったスティーヴン・スピルバーグの自伝的作品『フェイブルマンズ』(The Fabelmans)やランク外の『イニシェリン島の精霊』(The Banshees of Inisherin)と同じく、週を重ねるどこに上映館数を増やし、上位に食い込んでくるタイプの作品。

なお、同じく限定上映のサム・メンデス監督のドラマ「エンパイア・オブ・ライト」(Empire of Light)は、110館で公開され、16万ドルと厳しい結果となった。

ニューヨーク映画批評家協会賞で作品賞と女優賞(ケイト・ブランシェット)を受賞した「Tár」も22位で、根強く残っている。

そろそろ各映画賞のノミネート作品が発表され始める。ハリウッド外国人映画記者協会の構成メンバーに黒人が含まれていなかったことが発覚。急いで多様性に対応するものの、近年は信憑性を失ってしまったゴールデングローブ賞ではあるが、昨日(日本時間23時頃)に発表されたノミネートの中には『イニシェリン島の精霊』が7部門8ノミネート、『フェイブルマンズ』も5部門ノミネートされている。 この結果も多少ながら週末の成績に影響を及ぼすものと思われる。

上位の動きは、あまり変わり映えしない結果ではあったが、今週末に、いよいよジェームズ・キャメロンが長年かけて挑んできたプロジェクト『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』が公開となる。前作『アバター』(2009)は、3D映画導入時期と重なったことで、新体験、つまりアトラクション的要素が助けとなり、爆発的なヒットを記録した。ストーリー性には批判も多い作品であったが、新作を試写で観たマスコミ関係者、批評家からストーリーに対しても高評価が相次ぐなど、前評判が高く、どれだけのオープニング成績をたたき出せるかに注目が集まっている。

December 9-11, 2022(Souce: www.boxofficemojo.com)

1.Black Panther: Wakanda Forever $11,100,000
2.Violent Night $8,699,685
3.Strange World $3,600,000
4.The Menu $2,700,000
5.Devotion $1,999,581
6.Black Adam $1,340,000
7.The Fabelmans $1,180,034
8.Met Opera: The Hours $791,374
9.I Heard the Bells $750,713
10.Spoiler Alert $700,407