テイラー・スウィフトのコンサートチケット500万円!米チケット大手の合併解消議論に飛び火

282

15日に先行販売がスタートしたテイラー・スウィフトのツアーのチケットをめぐり、ファンからウェブサイトがクラッシュして手続きができないとの苦情が相次いだ。

「娘のチケットを買うために、馬鹿らしいウェブサイトに一時間もいる。”verified fans”で、コードも持っている。でも彼らのサイトは狂ったようにエラーを表示している」

販売元の米チケット販売大手チケットマスターは問題について、数百万人の購入者が殺到する「歴史的に前例のない需要」により「インターネットの問題」が発生したと釈明した。

500万円で転売!?

同社では、転売業者によるボットを使った買い占めなどの問題を防ぐため、「Verified Fan」と呼ばれるプログラムを導入している。同社の説明によると、専用ページから登録したファンに対して、販売前日に「招待状」が送信される。招待状は全員に配信されるわけではなく、当選者は「需要」などの要因よって決まるとしている。招待状には、チケットセールサイトのリンクとコードが記載されており、販売開始後、リンク先のページを訪問すると、「仮想の列」に並ぶなどの一定の手続きを経て購入が完了する。

今回の問題をめぐって、ある購入者は、オンラインの列で最大8時間待ったと報告。購入を逃したとの声も相次いだ。

Advertisement

プログラムの意図に反して、チケットが翌日には転売サイトに出回った。CNNによると、ニュージャージー州のメットライフスタジアムの公演は、ステージ前の席が最大2万1,600ドルで、最低でも350ドルだったという。ちなみに正規の販売価格は49ドルから499ドルだった。

ツアー初日となるアリゾナ州の3月17日のチケットは、最大1万7,010ドルで、4月28日アトランタ公演は最大3万5,438ドル(約490万円)だった。

合併解消議論に飛び火

そうしたなか、民主党のアレクサンドリア・オカシオ・コルテス議員はツイッターで「念の為。チケットマスターは独占企業で、ライブネーションとの合併は認められるべきではなかった」と投稿。「解体するべき」と主張した。

コネチカット州司法長官を歴任した後、連邦議員となったリチャード・ブルーメンタール上院議員(民主党)は、「ライブネーションとチケットマスターの合併が、ほぼ独占状態を作り出して消費者に損害を与えている完璧な例」と指摘し、「私は司法省に対し、チケット業界の競争状況を調査するよう長い間求めてきた」とツイートした。

デイビッド・シシリーン下院議員(ロードアイランド 民主党)は「チケットマスターの過剰な待ち時間と費用は、まったく容認できない」と今回の問題に言及した上で、「より大きな問題の症状だ。ライブネーションとチケットマスターの独占が野放しなのは周知の事実だ」と非難。「これらの企業の合併は、そもそも許可されるべきではなかった」と加え、ジェロルド・ナドラー議員(ニューヨーク 民主党)らと連名で作成、昨年4月に司法省に提出した書簡を添付した。

2010年、オバマ政権下の司法省は、世界最大のコンサートプロモーター「ライブネーション」と、チケット販売最大手「チケットマスター」の合併を認可。「ライブネーション・エンターテイメント」が誕生した。

ライブネーションは、アーティストの管理や会場の所有、コンサートのプロモーションまで幅広く手がけており、チケットマスターとの垂直統合は、コンサート業界の独占につながるとして、ながらく批判の対象とされてきた。一方で政府は当時、合併交渉の条件とされた同意判決によって、競争が促進され、新会社の独占的行動を阻止できると主張していた。

ニューヨークタイムズによると、同社は2018年の時点で、世界で200箇所以上の会場を運営。その前年に関わった公演数は3万回で、5億枚のチケットを売り上げていた。チケット価格の高騰に加え、購入者から徴収する高額なサービス費用も問題視されている。米国政府監査院の報告によると、同社は同年のチケット販売市場の80%を占めていた。

シシリーン下院議員は先述の書簡で、同社は繰り返して同意判決の内容に違反したと指摘。「会場を脅して、チケット販売サービスにアーティストらをバンドルすることを強制する」といった慣習によって、チケット販売市場の80%を超えるシェアを維持しているとした。さらにセカンダリーマーケットのポジションを拡大し、転売市場の最大手のひとつに成長しているとも指摘し、司法省と連邦取引委員会に、「不公平かつ欺瞞的、反競争的な慣行」の可能性をめぐって調査をするよう要求した。