「おしゃべりの負け犬」タリバンがヘンリー王子を挑発、身の危険心配する声も

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回顧録「スペア」が物議を醸しているヘンリー王子だが、その内容をめぐって身の危険を心配する声まで飛び出している。

「スペア」の正式な発売日は10日で、実際のところはまだ市場に出回っていない。メディアが発売前に入手したコピーを元に報じているほか、スペインでは一足先に誤って書店に並んだと伝えられている。

初体験や兄との衝突、王室のメーガン妃を含む二人に対する扱いなど、本に記されたとされる様々なエピソードが紹介されているが、今回新たに報じられた、アフガニスタンで経験した戦闘任務に関する内容が波紋を呼んでいる。

ヘンリー王子は、英国陸軍に所属した10年間の間に、アフガン派遣を2度経験した。最初は2007年から2008年で、2度目は2012年から2013年だった。デイリーメールによると、2007年の派遣では、ヘルマンド州で前線航空管制官を務めた。2012年に戻る頃には戦闘ヘリ「アパッチ」に乗り、30mmチェーンガンやヘルファイアミサイルの発射を担当するようになっていた。

英紙テレグラフによると、この時の経験について、王子は回顧録の中で「私の数は25で、満足行く数でもないが、恥ずかしくもない」と殺害した敵の人数に言及しているほか、別の章では、タリバンの戦闘員を、人間としてではなく、排除すべき「チェスの駒」と表現しているという。

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この内容に、軍関係者から非難の声が上がった。

インディペンデントによると、イラク開戦前夜のスピーチが有名な、英国陸軍のティム・コリンズ大佐は、「Forces News」の取材に、25人を殺害したとする王子の主張を「軍隊における振る舞い方ではなく、考え方でもない」と非難。内容について「悲劇的な金儲けの詐欺」と厳しく批判したほか、「ヘンリー王子は、かつて自分を受け入れてくれたもう一つの家族である軍に背を向け、生家をゴミ箱に捨てた」と断じた。さらに、英国連邦の人々にとって「異質」な道を歩む王子は、「アメリカのアイデンティティポリティックスを追い求め、何も存在しないところに中傷や人種差別疑惑を投げかけている」とも加え、「必要のない富を追い求め、彼が切実に求めた家族や仲間の愛を拒絶する姿には、失望と惨めさしか感じられない」と話した。

元英海兵隊員で、2008年にアフガニスタンで腕と脚を失ったベン・マクビーン氏は、「ヘンリー王子を愛している」としつつ、「黙るべきだ」と指摘。「どんな人々とつるんでいるのか不思議なくらいだ。良い人々であれば、今頃誰かがやめるよう言っているはずだ」とツイートした。

相次ぐ非難の声に、当のタリバンも加わった。

英紙デイリーメールによると、タリバンの司令官モラヴィ・アガ・ゴル氏は、イランと国境を接するアフガニスタンの町イスラム・カラの検問所近くで、同紙の取材に「われわれはここで統治を続けているが、彼はお婆ちゃんのお城に逃げ戻った。注目を集めたいだけのおしゃべりのルーザーだ」とコケにした。

ゴル氏はまた、「負け犬の言うことは信じてはならない」と主張。王子のニュースをFacebookでよく目にしていると明かしつつ「彼は本当に気がおかしくなっていて、すぐに医者が必要だと思う」と皮肉を加えた。

「(タリバンを25人殺害したことを)たとえ信じようとも、我々の殉教者ムジャヒディンは天国にいるが、彼の侵略者の友人たちは地獄で焼かれている。私が彼がいた当時ヘルムンドにいて、本当のチェスの駒が何であるかを教えてやればよかった」と述べ、「彼が真の男で、ファッキンルーザーでないのならば、もう一度アフガンに来い」と挑発した。

この一方、ゴール州のタリバンの司令官だと言うモラヴィ・ケラムディン氏は、王子の告白をめぐり調査を要求した。

ケラムディン氏は市民が殺害された可能性があるとし、「英国に制度と規制があるならば、彼が誰を殺したのか調査すべきだ」と主張。「民間人を殺害して、自由にのさばらしておくべきではない。許すことはできない」と述べた。

アフガニスタン外務省のアブドゥル・カハール・バルキ報道官は、ヘンリー王子の発言にあるのは「罪のない人々を殺害しても責任に問われない占領軍の手によってアフガニスタン人が経験したトラウマの縮図である」と述べたという。

批判がヒートアップする中、王子の身や、世界各地にいる英国兵士の安全を懸念する声も上がっている。

先述のベン・マクビーン氏はスカイニュースのインタビューに「彼が声を大にして言ったのは、賢明ではない」と主張。「彼はすでに、誰よりも狙われている」と懸念を示した。

退役陸軍大佐のチャード・ケンプ氏は、BBCに、王子の主張を「判断ミス」だと述べ、「英国軍と英国政府に危害を与えることを望む人々にとって、潜在的に価値のあるもの」と指摘した。

ちなみに家族の身に危険がおよぶことを最も警戒してきたのはヘンリー王子自身で、英国訪問時の警察による警護をめぐって、政府を訴え裁判で争っている。昨年12月に配信されたNetflixのドキュメンタリー番組「Harry & Meghan」の中でも、安全の問題に繰り返し触れている。