「2001年宇宙の旅」や「時計じかけのオレンジ」などの名作で知られる巨匠、スタンリー・キューブリック(Stanley Kubrick)監督の写真展が、ニューヨーク市立博物館(Museum of the City of New York)でスタートした。
キューブリックは、高校卒業後、映画監督としてデビューする前の約5年間、ニューヨークの出版社でプロのフォトグラファーとして活動していた。「Through a Different Lens」と題した展示会では、ニューヨークのストリートシーンや、セレブ、ボクサーなど撮影した未公開を含む約130点の写真が展示されている。
キューブリックは、「21歳までの4年間で、世の中の仕組みを観察してきた。もし私が大学に行っていたら、映画監督にはなっていなかっただろう。」とニューヨークタイムズ紙に語っている。キューブリックは写真を通じて、フレーミングや、構成、ライトニングのスキルを磨いたと言わている。写真家としてのキャリアが、監督業に与えた影響を知ることができる貴重な展示会となっている。
フォトグラファーとしてのキューブリック
ブロンクス育ちのキューブリックは、1946年にウィリアム・ハワード・タフト(William Howard Taft)高校を卒業後、当時「ライフ」(Life)誌の競合であった、フォトジャーナリズム誌「ルック」に見習いとして入社した。キューブリックが同誌に最初に売り込んだのは、1945年にフランクリン・ルーズベルト大統領が死去した翌日の写真で、陰鬱な様子でニューススタンドに座る店主の様子を写したものだった。その後、1950年8月までの約5年間、専属フォトグラファーとして同誌で活躍した。
ルックでは、「Life and Love on the New York Subway」や、「only in New York」などの企画を手がけ、ストリートから、地下鉄、ブロードウェイ、ナイトクラブまで40年代のニューヨークを撮影した。






出版社や映画、音楽、ボクシングなど戦前のエンターテインメント業界のストーリーをカバーし、雑誌ニューヨーカーの漫画家ピーター・アルノ(Peter Arno)や、俳優のモンゴメリー・クリフト (Montgomery Clift)、女優のフェイ・エマーソン (Faye Emerson)、作曲家レナード・バーンスタイン(Leonard Bernstein)、ガイ・ロンバード(Guy Lombardo)、ボクサーのロッキー・グラジアノ(Rocky Graziano)らの写真を撮影した。一方で10代の青年らの恋愛やデート、結婚にまつわる嫉妬心などをテーマにエッセイを寄稿していた。





ルックでの最後の年では、処女作となった短編ドキュメンタリー作品「拳闘試合の日」(Day of the Fight)の製作を開始している。展示会場では、ドキュメンタリーのベースとなった物語「プライズファイター」(Prizefighter)や、ボクサーのウォルター・カルティエ(Walter Cartier)に関するコーナーが設けられている。
Through a Different Lens: Stanley Kubrick Photographs
場所:ニューヨーク市立博物館(Museum of the City of New York)
住所:1220 5th Ave & 103rd Street, New York, NY 10029
期間:2018年5月3日から10月28日まで
http://www.mcny.org/