米体操女子の金メダリスト、シモーネ・バイルス(Simone Biles)選手(24)は27日、団体総合決勝を途中棄権した。シモーネは跳馬を不振な成績で終えた後、控えに回った。
試合はロシア五輪委員会が金メダルを獲得。リーダーを務めるシモーネが抜け、3人となった米国は銀メダルに終わった。
シモーネの途中棄権の理由について、情報が錯綜。米国体操連盟の広報担当は当初「医療上の問題によるもの」と述べ、今後の出場に関しては「毎日評価を行う」と発表した。一方NBCニュースは、足のけがではなく、メンタルヘルスによるものだとコーチが示唆していると報じていた。
表彰式後の記者会見でシモーネは、強いストレスにさらされると、異常な精神状態になると説明。「自分の健康と幸福を損なわないようにして、メンタルヘルスに集中したい」と精神上の理由であると明らかにした。デイリーメールのスポーツライター、イアン・ハーバート氏によると、シモーネは「われわれは、自分の心と体を守らなければならない」と述べ、女子テニスの大坂なおみ選手らに刺激を受けたと語ったという。
One of the most remarkable mixed zone press conferences I’ve known. In which Simone Biles described pulling out of tonight’s team event because she had to put her mental health first. Says she was inspired by Naomi Osaka among others #Olympics #ArtisticGymnastics pic.twitter.com/p3Rli5S7J0
— Ian Herbert (@ianherbs) July 27, 2021
大坂選手は今年、全仏オープンテニスを途中棄権した際、2018年からうつに悩まされてきたと告白。タイム誌への寄稿では、「アスリートも人間」であり、「厳しい制裁対象とならずに、メディアの監視から、たまの心の休息を得る権利が与えられるべき」と提言した。
シモーネは団体競技を棄権したが、個人総合はトップで通過している。しかし「それほど楽しめていない」と現在の心境を説明し、競技を継続するかについては明言を避けた。続けて「今大会は自分自身のためにと思っていたが、やはり他人のために競技しているように感じる。好きなことをすることで、他人を喜ばせるために、私から奪い取られているかのようだ。それは、私の心を傷つけている」と語った。
さらに「われわれはただのアスリートではない。最終的には人間である」「人生には体操よりも重要なものがある」と話した。また米国チームは、翌日に「メンタル休暇」を取得すると発表した。
シモーネは不本意な結果となった予選後、SNSで「世界の重圧がのしかかっているようだ」「オリンピックでのプレッシャーは半端ない」とコメントしていた。
シモーネの決断に対し、SNSでは励ましや賛同、「勇敢だ」などの声が寄せられた。一方で「数週間前に大会を辞退し、他の選手にその座を譲るべきだった」「自分勝手」といった非難の声や、「メディアが必要以上に選手を持ち上げ、プレッシャーをかけすぎた」などのコメントが寄せられている。