東京五輪「膝つき」抗議禁止、米金メダリストが憤慨

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東京五輪で、引き続き選手の抗議行動が禁止されることが決まり、これに元米国代表の五輪金メダリストが異議を唱えた。

22日、テレビ番組「TMZ Live!」のインタビューで「憤慨している」と話したのは、2004年のアテネ五輪、2008年の北京五輪、2012年のロンドン五輪の各大会で通算4つの金メダルを獲得し、短距離のレジェンドとされる女子陸上の元米代表選手、サーニャ・リチャーズ=ロス(Sanya Richards-Ross)氏。

リチャーズ=ロス氏は「スポーツは一種の逃避の場だという考えは理解できる。政治や日常のいざこざから離れたいのでしょう。でも真実は、少数派や黒人、取り残された人々にとって、現実逃避は不可能だということ。黒人であることからは逃げられない」と語った。

国際オリンピック委員会(IOC)は21日、東京五輪では引き続き、競技中および表彰式、公式セレモニーの最中の選手による抗議行動を禁止する規則を維持すると発表した。これには、膝をついて差別に抗議する行動も含まれる。膝をついて規律を拒否する行為は、2016年のNFL公式戦で、国歌斉唱の際、警察官による黒人への暴力に対する抗議として当時サンフランシスコ・49ersのクオーターバックだったコリン・キャパニック選手が行い、その後、他のチームの選手へと波及した。

リチャーズ=ロス氏は委員会の責任者らが抗議行動について「パフォーマンスの妨げになる」と話しているのをよく聞くとした上で、それは誤った考え方だと主張。「むしろ大会を盛り上げると思う。抗議行動をすることで、人々が何に情熱を注ぐかが見えてくる。選手の気持ちを深く感じ取ることができる」と述べ「IOCが抗議行動を妨げと捉えたのは、不幸な判断」と語った。

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一方、世界にメッセージを伝えたいという選手の望みは抑えつけられないと指摘。「行動を起こさなければらなないと感じている選手は、何と言われようとやると思う」と述べ「自分を表現するのに罰金を支払う人々を応援している」とエールを送った。

今回の決定に関し、IOCは各種専門家や選手を交えて慎重に議論した結果だとしている。16歳から55歳以上の選手や元オリンピック選手など3,500人以上に意見を募ったところ、抗議行動を不適切だとする意見が多かったという。IOCの選手委員長、キルスティ・コベントリー氏(Kirsty Coventry)は「選手の大多数が、競技場や公式セレモニー、表彰式などで、抗議行動をしたり自分の考え方を表現するのは不適切と考えている」「我々としては、表彰台や競技場、公式セレモニーは、抗議行動やデモ、またはそのように受け止められる行為から守られるべきとの立場を取る」と語った。罰則については現在、法務委員会と協議中だとしている。

IOCに先駆け、米国オリンピック委員会は数週間前、膝をついた抗議など、平和的なものであれば、抗議行動をした選手を罰則の対象とはしないと発表していた。ただし、IOC含む「第三者機関」が罰するとした場合、それを覆すことはできないとも認めている。