ケノーシャ銃撃事件、犯人の少年は「米国史に名を残す愛国者」=弁護士

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8月25日夜、ウィスコンシン州ケノーシャで、抗議活動を行っていたプロテスターらを銃撃し、殺人の罪などで起訴されたイリノイ州アンティオーク郊外出身のカイル・リッテンハウス(Kyle Rittenhouse)被告(17)は、ウィスコンシン州への身柄引き渡しの審理のため、9月25日に出廷する。NBCニュースが報じた。

事件では2人が死亡、1人が負傷した。リッテンハウス被告は、第1級殺人と殺人未遂の罪で起訴されている。もし第1級殺人で有罪判決を受ければ、終身刑は真逃れない。ウィスコンシン州の刑法では、17歳以上は成人として扱われるという。

リッテンハウス被告の弁護士はこれまで、被告の行為は正当防衛だっただけでなく、彼は勇敢な自由の擁護者であり、暴動の中で武装する自らの権利を行使した愛国者なのだと主張している。

弁護団に関係するグループが今週公開した動画では、現場で撮影された動画を元に事件の経緯を検証しつつ、最後に「17歳の市民が政治家によって犠牲にされているが、彼らの狙いはカイル・リッテンハウスではない。彼らの究極の目的は、市民が地域社会を守るための憲法上の権利を剥奪することなのだ」と結んでいる。

また弁護団を率いるジョン・ピアース弁護士は今月「カイル・リッテンハウスは無名の勇敢な愛国者と並んで米国の歴史に名を残すだろう。彼は”世界中に響きわたる銃声”を発したのだ」と、犯行を独立戦争になぞらえ、リッテンハウス被告を英雄視するツイートを投稿。続けて「圧政に対する第二の独立戦争が始まったのだ」と、過激な主張を展開していた。なおこのツイートは現在削除されている。

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これらの主張は、リッテンハウス被告の弁護費用として200万ドル近くを集めるのに役立ってはいるものの、十代の若者を終身刑に処す可能性のある告発を検討する陪審員には通用しないかもしれない。法律の専門家は、あまりにも単純な自己防衛のケースを、自由のための闘いに変えてしまうことには大きなリスクがあると指摘している。

ロサンゼルスの著名な弁護士、ロバート・バーンズ氏は、弁護側のこういった主張は、批判的な立場の人々が求める「本人の最大のマイナスの側面やステレオタイプ」に通じるもので、これらの人々はリッテンハウス被告を「革命を起こそうとして、危害を加える狂った市民兵」とみなそうとしていると述べている。

ケノーシャ銃撃事件

事件があったのは8月25日夜。現地では、2日前に発生した警察官による黒人男性銃撃事件に対する抗議デモが行われていた。

当日、ライフル銃を持ったリッテンハウス被告は、Daily Callerのチーフ・ビデオ・ディレクターの取材に「私の仕事はビジネスを守ることだ。人々を守ることも仕事だ。」と答えていた。「誰かが負傷した場合、危険な状況に遭遇する。だからライフルを携帯している。自分を守らなければならない。」と、武器携帯の理由を語っていた。

ニューヨークタイムズによると、リッテンハウス被告は最初の発砲の前、集団に追いかけられていた。この際、近くで何者かが発砲したことが動画によって確認されている。リッテンハウス被告は、追ってきた1人の男性に対して4発発砲。銃弾が男性の頭部に命中した。

最初の発砲の後、現場を走り去るリッテンハウス被告に対し、周囲から「あいつが銃撃犯人」だとの声が飛び交い、複数人が追いかけた。途中、リッテンハウス被告は転倒。突進してくる3人に対して4発発砲した。このうちの1人は、胸を打たれ地面に倒れた。拳銃を所持していたもう1人の男性は、腕を打たれて、走り去った。

事件の直後、事件の様子がSNSで広く出回った。

翌日、ケノーシャから30分ほどの距離にあるイリノイ州レイク郡アンティオークの警察は、銃撃事件に関連して、リッテンハウス氏(17)を拘束したと発表した。