米、カショギ氏殺害はサウジ皇太子が「承認」、実行部隊に制裁発動

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バイデン政権は26日、サウジ国籍のジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏の拘束または殺害作戦は、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子の承認によるものと報告したインテリジェンスレポートを公開した。

国家情報長官室はレポートで、評価の根拠には、政府の意思決定における皇太子の支配力や、皇太子の警備隊員の直接的関与、皇太子が反体者を抑圧するために暴力の使用を支持していたことがあると説明。「2017年以降、皇太子は、王国の安全保障と情報機関に対する絶対的な統制力を持っており、皇太子の承認なしにこの性質の作戦が実行される可能性は非常に低い」と報告した。

ワシントンポスト紙でサウジ政府の政策に批判的な論説を発表していたカショギ氏は、2018年10月2日にイスタンブールにあるサウジ総領事館を訪れた際、建物内で殺害された。遺体は解体され、発見されていない。

報告書では、当日15人のメンバーがイスタンブールに到着したとしている。この中には、皇太子の右腕のサウード・カハタニ(Saud al-Qahtani)氏が率いる王宮の「センター・フォー・スタディーズ・アンド・メディア・アフェア(CSMARC)」の関係者や、皇太子の精鋭警備部隊「ラピッド・インターベンション・フォース(R.I.F.)」の隊員7人が含まれるとしている。

R.I.F.は王宮衛兵の一部で、皇太子の護衛のために存在し、皇太子の指令のみに対応するという。

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ニューヨークタイムズによると、カショギ氏殺害の1年ほど前から、ムハンマド皇太子は、反対者を弾圧するための秘密の活動に承認を与えていたとみられている。これらには監視や誘拐、拘束、拷問といった行為が含まれている。

R.I.F.は少なくとも十数件の活動に関与し、アラブ諸国からサウジ国民を強制的に送還するほか、皇太子とサルマン国王の宮殿に囚人を拘束および虐待するなどの活動を行なったとみられている。

組織はムハンマド皇太子が承認し、カハタニ氏が監督しているとう。皇太子の海外訪問にも同行していたMaher Abdulaziz Mutreb氏が現場を指揮しており、王宮衛兵のメンバーであるThaar Ghaleb al-Harbi氏も加わっている。

国家情報長官が報告した、事件に「参加、指令または加担、責任を負う」21人の中に、3人の名前も含まれている。

2017年、ムハンマド皇太子が王子やビジネスマン、元高官ら数百人を汚職容疑でリッツ・カールトンに拘束した際、カハタニ氏とMutreb氏はホテルで、被拘束者らに資産譲渡に同意するよう圧力をかけるのを手助けした。目撃者によると、被拘束者の多くは身体的な虐待を受け、1人が死亡した。R.I.F.のメンバーが虐待に関与したかは不明。

R.I.Fはまた、2018年に女性の権利向上キャンペーンを行なった人権活動家の拘束や虐待にも関与した。著名な活動家、ルジャイン・ハズルール(Loujain al-Hathloul)氏は2018年に拘束され、今月解放された。このほか、拘束された大学講師の女性は、心理的拷問を受けた後、自殺を試みたという。

サウジ政府はカショギ氏の事件に関連して、8人を裁判にかけたという。被告の名前は公表されていない。

昨年9月、サウジの裁判所は、このうち5人に禁錮20年の刑が確定し、3人はこれよりも軽い刑を受けたと発表した。受刑者は一部は、死刑判決を受けたが、カショギ氏の息子と親族が許しを公に表明したことから、減刑されたという。

R.I.F.のメンバーがこれらに含まれているか不明。カハタニ氏は、検察が裁判にかけるには証拠が不十分だとしたため、解放されたと発表されている。

米財務省は26日、サウジ政府の情報機関の元副長官アフメド・アル・アシリ氏とR.I.F.に対して制裁を発動すると発表した。