土曜日, 4月 4, 2026
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米政界マネーマップ:クリプト対立、法案から資金戦争へ

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クリプト業界の対立は、法案の文言争いから政治資金の配置競争へと移行しつつある。

4月1日付、政治活動委員会「Fellowship PAC」は、Tether USの規制対応責任者ジェシー・スピロを会長に起用すると発表した。今後、「イノベーション推進」、「米国の競争力強化」、「ルールの透明性」にコミットする候補者支援を本格化させるとしている 。

この発表のタイミングは象徴的だ。直前には、クリプト構造化法案「Clarity Act」のドラフトをめぐり、業界内の対立が表面化していた 。

争点とされるのは、「デジタル資産サービスプロバイダー」によるステーブルコイン残高への利回り提供を禁止する条項である。この規定は、USDCを軸に収益モデルを構築してきたプレイヤーにとって不利に働く可能性が高い。一方で、Tetherにとっての直接的な打撃は限定的とみられる 。

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実際、ドラフトが報じられた日、Circleの株価は20%近く下落した。これに強く反発したのが、米暗号資産交換所大手Coinbaseのブライアン・アームストロングCEOだ。同社の収益の一部は、USDC準備金の運用利回りに連動するインセンティブに依存しているとみられており、この条項は事業モデルに直結する問題となる。一方で、他のプレーヤーからは、細部よりも法案成立そのものを優先すべきだとの声が上がっている 。

つまり、この対立は単なる政策論争ではなく、どの収益モデルを制度の中に組み込むのかという競争とみることができる。

資金はどこに向かっているのか

ここで重要なのが、政治資金の動きだ。

Fellowship PACは設立時、「透明性と信頼に基づき、エコシステム全体を支える」と説明していた。しかし実態としては資金源の透明性は限定的であり、そのネットワークの中立性には疑問も残る 。

ニューヨーク・タイムズの報道によれば、同PACの会計責任者にはCantor Fitzgeraldの幹部が就いているとされる。同社は商務長官ハワード・ラトニックが率いた企業(現在は息子が引き継ぎ)で、Tetherのカストディ業務を担っている。この政治的接点は無視できない。

一方、業界全体を見れば、スーパーPAC「Fairshake」が2024年選挙で大規模な資金投下を行い、候補者支援で高い成功率を収めたことも記憶に新しい。同PACは2026年も党派を超えた候補者支援に1,200万ドル規模の拠出を開始している 。

これに対し、Fellowship PACは一部で共和党寄りの色彩を帯びると指摘され、トランプ陣営との接点もある。現時点でFEC報告は限定的だが、1億ドル規模の支出意向が示されている点は注目に値する 。

現時点で、資金がどの陣営に明確に偏っていると断定することはできない。しかし、Clarity Actをめぐる議論を通じて、業界内では、規制を前提に制度の内側で優位を取ろうとする動きと、既存の収益モデルを守ろうとする動きが、徐々に分かれ始めている。今後、この分岐はロビー活動や候補者支援を通じて、より明確になっていくことが予想される 。

法案をめぐる対立は、クリプト業界における政治影響力と資本配置の競争へと移行しつつある。Fellowship PACの動きはこれを象徴している。

次の注目点

  • ①政治資金の実弾投入先(FEC報告)
    Fellowship PACおよびFairshakeが、実際にどの候補者・どの委員会に資金を投じるのか。特に、下院金融サービス委員会や上院銀行委員会、農業委員会(CFTC所管)に関係する議員への集中度は、Clarity Actまたはクリプト関連規制の行方を占うシグナルになる。
  • ②Clarity Actの条文修正(マークアップ過程)
    焦点の「利回り提供制限」が維持されるのか、それとも例外規定や緩和措置が入るのか。条文の微修正は、どのビジネスモデルが制度に組み込まれるかを示唆する。
  • ③企業側の戦略シフト
    CoinbaseやCircleがロビー活動を強化するのか、それともプロダクトや収益モデルの転換に動くのか。一方で、Tether側がどの程度まで米国内の規制フレームに適応する姿勢を見せるかも重要なポイントとなる。

*本稿はFEC公開情報や報道等に基づく政治・政策の構造分析です。特定の金融商品への投資を推奨するものではありません。

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