アカデミー賞「RRR」パフォーマンス、南アジア系から不満の声

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第95回アカデミー賞授賞式で披露された映画「RRR」のライブパフォーマンスの出演者を巡り、南アジア系のアーティストが除外されていたとして、怒りの声が上がっている。

テルグ語で製作された同作品の劇中歌「ナートゥ・ナートゥ」は、インドの映画として初めて歌曲賞を受賞した。

パフォーマンスの振り付けは、ロサンゼルスを拠点とするデュオ「Nappytabs」こと、ナポレオン&タビサ・デュモがテレビ向けにアレンジバックダンサーには、主に2人の仕事仲間が起用され、南アジア系は、ほとんど含まれていなかった。

映画界における人種の多様性を訴える#OscarsSoWhiteのファウンダー、エープリル・レイ氏は、「南アジアの振付師やダンサーにハイライトを当てるのは、非常に容易かったが、アカデミーはそうしないことを選択した」と非難した。

また「STOMP」などに出演歴のある南アジア系のダンサー、ビカス・アルン氏はSNSで、バックダンサーは、インド古典舞踊や民族舞踊、商業舞踊などの経験はほとんどなかったと述べ、これらを「1週間で上達できると考えてはならない」と安易なキャスティングに不満を示した。

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アルン氏はVarietyの取材で、南アジア系のコミュニティの規模は小さく、組織立って自らの権利を主張することができないことに苛立ちを感じていると語っている。

バージニア大学のメディア研究者シルパ・ディブ助教授は同誌に、「われわれは米国の主要産業における不平等を目の当たりにしている。南アジア人は地球の反対側に住む外国人であり、文化や歴史の一部ではないという考えを強固にするもの」と非難。ハリウッドの南アジア人は長年、極ささいな役を演じることを余儀なくされてきたとし、このような好機にチャンスが与えられなかったことを問題視していると語った。

これとは別に、インドの映画業界で活躍するアメリカ人ダンサー、ローレン・ゴッドリーブは授賞式の数日前、リハーサルの模様をSNSに投稿。RRRをヒンディー語の映画である「ボリウッド」(正しくは「トリウッド」)と誤った呼称で呼び、非難を浴びていた。

なお、アカデミー賞のプロデューサー、ラージ・カプール氏は14日、アカデミーの会員向けブログ「A.Frame」の中で、今回のキャスティングについて、当初はRRRの俳優ラーム・チャランと N.T. ラーマ・ラオ・ジュニアが、パフォーマンスへの参加を予定していたが、時間的制約を理由に辞退したと説明。そのため、レバノン系カナダ人のビリー・ムスタファとアメリカ人のジェイソン・グローバーが起用されたと明かした。

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
▲作品賞など7部門を制覇『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』

アジア系が躍進

今年のアカデミー賞授賞式では、コインランドリーを経営する中国系アメリカ人が主人公の「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」が作品賞など7部門を受賞。マレーシア出身のミシェル・ヨーが、アジア人初の主演女優賞を獲得したほか、「グーニーズ」や「インディー・ジョーンズ」などの出演で知られるベトナム出身のキー・ホイ・クァンが、助演男優賞を受賞するなどアジア人の活躍が目立った。