オバマ氏が警告「デファンド・ザ・ポリス」のスローガン、支持を失った

228

オバマ前大統領は、スナップチャットの政治番組で、警察部門の予算削減を訴えるスローガン「デファンド・ザ・ポリス」(defund the police)のような広範なスローガンは、支持者を遠ざけ、警察改革を実現する妨げになると警告した。

デファンド・ザ・ポリスは今年5月、黒人男性ジョージ・フロイド氏がミネアポリスの警察官によって殺害された後、人種間の平等を求める抗議デモの中で使用され始めた。警察部門の予算を削減し、教育やソーシャル・サービス、低所得向けの住宅補助などへの再配分を求めている
ブラック・ライブズ・マターの共同設立者、アリシア・ガルザ(Alicia Garza)氏は、NBCでデファンド・ザ・ポリスの目的について、「コミュニティが必要とするリソースに投資を行うことだ」と語った。2期目の当選を果たしたアレクサンドリア・オカシオ・コルテス下院議員(民主党・ニューヨーク州)を始め民主党の左派議員は、このスローガンを支持している。

支持を失ったと警告

「グッド・ラック・アメリカ」(Good Luck America)の司会者ピーター・ハンビー(Peter Hamby)氏から、デファンド・ザ・ポリスを訴える若い活動家へのアドバイスを求められたオバマ氏は、「もしあなたたちが、人が偏見なく平等に扱われるよう刑事司法制度の改革を行うべきだと信じているのなら、”デファンド・ザ・ポリス”のようにキャッチーなスローガンを使うことができると思う。しかし、それを言った瞬間に大勢の聴衆を失った。それは、本当に成し遂げたい変化を得るチャンスが、より低くなってしまう」と述べた。

「しかしもし、デファンド・ザ・ポリスの代わりに、”警察部門を改革しよう。皆が平等に扱われる。若者を犯罪から遠ざけることができる。ホームレスがいたら、悲劇で終わる可能性がある武装した警察の代わりに、メンタルヘルスワーカーを派遣できる”と訴えれば、話を聞こうとしなかった人たちも、すぐに耳を傾けてくれるだろう」とアドバイスした。

さらに「実際に何かを成し遂げたいのか、もしくは既に賛同を得ている人々の中で、良い気分になりたいかを決めるべきだ」と述べた。「我々のように大きな、そして多様性のある国家で、民主主義で何かを成し遂げたいなら、それらの人々と繋がっていかなければならない。引き算ではなく、足し算で勝負すべきだ」と語った。

Advertisement

オバマ氏は、若者向けメディアComplexのインタビューでも、デファンド・ザ・ポリスのスローガンは「警察なしでなんとかできる。警察だけが、唯一の問題であることを示唆している」として使用に反対する姿勢を示していた。本当の問題は、これまでに断固とした改革を行ったことがないことだと語っている

民主党下院のナンバー3、ジェームズ・クライバーン(James Clyburn)院内幹事はAxiosやNBCで、サウスカロライナ州の上院選で、民主党候補者のジェイミー・ハリソン(Jaime Harrison)氏が、共和党現職のリンジー・グラハム(Lindsey Graham)上院議員に敗北した原因の一つとして、デファンド・ザ・ポリスのスローガンに言及。党内左派のイメージが、選挙戦に影響を及ぼしたと見解を示した。

ニューヨーク州第11選挙区の連邦下院議員選挙で、共和党のニコール・マリオタキス(Nicole Malliotakis)氏は、ブラック・ライブズ・マターの抗議デモに参加した中道派の民主党現職マックス・ローズ(Max Rose)下院議員を反警察運動の擁護者と攻撃。マリオタキス氏は、ローズ氏に左派的なイメージを植えつけるキャンペーンを展開し、勝利を手にした。

若手議員に活躍の場を

オバマ氏は、民主党はラベルやイデオロギーではなく「特定の物事を成し遂げることについて協議することに集中すべきだ」と主張した。社会主義は「印象操作的な用語」だと述べ、特に若い人々へと訴えかけるメッセージング戦略を求めた。「若者は、山ほどある政策分析には耳を傾けない」と述べ、「人は自分の生活に関連する物語に心を動かされる。ストーリーを伝えることだ」とアドバイスを送った。

また、今年8月に行われた民主党全国大会で、オカシオ・コルテス下院議員に割り当てられたスピーチの時間について言及。若者の人気の高いコルテス氏だが、全国大会ではバーニー・サンダース上院議員(無所属・バーモント州)を大統領候補に指名する役割で登壇し、演説に与えられた時間はわずか1分半だった。
オバマ氏は「長い間、古い仲間に固執し、新たな人々の活躍の場を与えていない」と指摘。「今の民主党には、若い人の声を増幅させることが必要だ」と述べた。

トランプ大統領が今回の選挙で、若い黒人男性の票を獲得したことについては、「男性は一般的に、たくましく振舞ったり、ステレオタイプのマッチョスタイルのイメージを与えようとする著名人の影響をより受けやすいと思う」と述べつつ、「黒人は白人やヒスパニックの男性より、影響を受けやすいとは思っていないが」と加えた。