NY市 65歳アジア人暴行事件、男を逮捕。過去に母親を刺殺

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ニューヨーク市マンハッタンで31日、65歳のアジア人女性を暴行し、重傷を負わせた男が逮捕された。

男の名は、ブランドン・エリオット(Brandon Elliot)容疑者(38)。事件が発生した場所に近い40ストリートと8アベニューにあるホテル「フォー・ポインツ・バイ・シェラトン」(Four Points by Sheraton)で拘束された。ホテルは現在、ホームレスのシェルターとして使用されている。

報道によると、エリオット容疑者は、ヘイトクライム(憎悪犯罪)としての暴行および暴行未遂で起訴される予定だという。

エリオット容疑者は29日午前11時40分ごろ、タイムズスクエア近くのヘルズキッチン(360 West 43 Street)で、65歳のアジア人女性に殴る蹴るの暴行を加え、「お前はここの人間じゃない」などと罵った。
ニューヨークタイムズによると、被害女性はフィリピンの移民Vilma Kariさんで、ニューヨークに数十年間住んでいる。Kariさんは、骨盤の骨折と頭部を打撲する重傷を負い、現在も入院している。

エリオット容疑者は2002年(当時19歳)、ブロンクスで42歳の母親Bridget Johnsonさんの胸を刺し、殺害。第2級殺人罪で有罪判決を受けた。17年間服役した後、2019年12月に仮釈放され、生涯にわたり、保護観察を受けることになっていた。ニューヨークポスト紙によると、エリオット容疑者は5歳の妹の前で、母親を刺したという。

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ニューヨーク市警察(NYPD)のダーモット・シェイ警察委員長はPIX11で、「刑務所から釈放したら、ホームレスのシェルターに移動させる。トラブルを求めているようなものだ」と指摘。われわれは、これを何年も繰り返していると語った。このような事件は「起きるべきでない」と述べ、セーフティネットとリソースが必要だと語った。

NYPDによると、アジア人に対するヘイトクライムは今年、33件報告されており、既に昨年全体の22件を上回っている。NYPDは先週、アジア人の私服警察を増員すると発表していた。

目撃者にも非難

SNSに投稿された動画では、容疑者が女性の頭部を繰り返し蹴る様子が撮影されていた。また建物内で配達人やスーツ姿の男性が事件を目撃しており、男が去った後、ドアを閉めようとする男性の姿も映っていた。SNSには男性らが女性を助けようとしなかったとして、非難する声が寄せられていた。

事件が起きた建物の前には、暴行を傍観していたとして職員らを非難する張り紙が掲示されていた。

アジア人ヘイトクライム ニューヨーク
アジア人ヘイトクライム ニューヨーク
©mashupNY

ビルのマネジメント会社ロドスキー・オーガニゼーション(Brodsky Organization)は声明で、労働組合と協力して調査を行う間、目撃した2人の職員を停職させると発表した。

一方、国際サービス従業員労働組合(SEIU)のKyle Bragg委員長は「彼らはすぐに救助を求めた」として、職員を擁護。ヘイトは許されないと述べつつ、「調査を行う間、早急な判断をしないよう」求めた。

デブラシオ市長は30日の会見で、事件は「最悪であり、とんでもない」と非難。許容できないとしつつ、「どこの誰であれ、ニューヨーカーを助けなければならない」と目撃者の対応に不満を表した。

クオモ州知事は31日、州警察のヘイトクライム部隊に捜査を支援するよう指示した。声明で「見た目や言語にかかわらず、すべての人々がお互いに気を配り、助け合わなければならない」と呼びかけた。アジア人への暴力は、州だけでなく全国で「まん延している」とし、「あらゆるヘイトと暴力に立ち向かうよう、一致団結して糾弾すべきだ」と述べた。

バイデン政権は、アジア人に対する暴力が増加していることを受け、被害者救済プログラムや、医療分野でアジア人への偏見を無くすための作業部会を立ち上げるなどの対策を発表した。
バイデン氏はツイッターで、「攻撃は誤りで、非アメリカ的だ。止めなければならない」と非難した。