NY市、トランプ氏との契約解除を検討

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ニューヨーク市のデブラシオ市長は、6日の議事堂襲撃事件を受け、トランプ・オーガニゼーションに運営を委託しているスケートリンクやゴルフ場について、契約解除を検討していることを明らかにした。

デブラシオ氏は12日の会見で、「トランプ大統領は米政府への反乱を扇動した。明らかな憲法違反で、これにより死者が出た。許されない行為だ」と非難した。
同事件では、警察官1名を含む5人が死亡。議会警察とDC警察合わせて50人以上が負傷した。

ワシントンポスト紙によると、トランプ・オーガニゼーションは現在、セントラルパーク内の2カ所のアイススケート場とメリーゴーラウンド、ブロンクスのゴルフ場を運営しており、市は年間1700万ドルを支払っているという。
デブラシオ氏の広報担当者は、現在契約解除に関する「法的根拠」に問題がないか確認していると述べた。最終決定の時期については、明らかにしていない。

トランプ氏の成功事業

1986年に営業を再開したセントラルパークのスケートリンク「ウォルマン・リンク」(Wollman Rink)は、トランプ氏が30代後半に手がけ、成功させた事業の一つとして知られる。

市は1980年代、1300万ドルを投じ6年間かけてリンクの改修を試みたが、計画は頓挫した。当時39歳だったトランプ氏は、経営権と引き換えにリンクの再建計画を請負い、予算内で、予定よりも2カ月間早い4カ月間で完成させた。トランプ氏は工事の期間中、何度も記者会見を開き、大々的に宣伝した。トランプ氏はウォルマン・リンクの完成後、パーク北端にある「ラスカー・リンク」(Lasker Rink)の運営を委託されている。

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トランプ氏に批判的な文化財保護の活動家、故ジョイス・マッツ(Joyce Matz)氏は、同リンクを「トランプ氏が行った事業で唯一皆に称賛されたもの」と評している。一方、当時の公園局の広報担当者で、後に公園局長に就任したAdrian Benepe氏は、トランプ氏が引き受けるまでに、プロジェクトはほぼ完成していたと語っている。

Curbedは、スケートリンクについて「セルフプロモーションの巨大な爆発で、小さな成果を誇大広告するトランプ氏の気質を完璧に凝縮したもの」と表現している。
政治家経験のないトランプ氏は2016年、アイオワで行った予備選キャンペーンで、リンクの成功をアピールしたという。

なお2019年秋、スケートリンクの看板から「トランプ」の文字は消去された

ブロンクスのフェリー・ポイントにあるゴルフ場は、伝説のゴルファー、ジャック・ニクラウス(Jack Nicklaus)氏が設計を手がけ、2015年に開業した。市の記録では、2020年3月時点の損益は67万ドルの赤字となっている。

相次ぐ企業の関係解消

事件後、ツイッターがトランプ氏のアカウントを永久凍結としたほか、フェイスブックもアカウントを「無期限に」凍結すると発表した
スナップチャットやTwitch、Shopifyもトランプ氏またはキャンペーンの利用を禁止。メルマガ配信サービス企業もトランプキャンペーンのアカウントを停止したと報じられている。

このほか、トランプ支持者に人気のソーシャルネットワークサービス、パーラー(Parler)について、グーグルとアップルはコンテンツモデレーションが不十分としてアプリの取り扱いを停止。さらにアマゾンが10日をもって、パーラーのホスティングを停止した。

ユーチューブは12日、280万人の登録者をもつトランプ氏のチャンネルに関して、新たな投稿を少なくとも1週間凍結すると発表している。

ニューヨークを拠点とするシグネチャー・バンク(Signature Bank)は11日、トランプ氏の個人預金口座を閉鎖すると発表した。口座には530万ドルが預けられていたという。同銀行は、襲撃事件を「不快で衝撃的」だったと非難。トランプ氏が暴徒を扇動し、州兵を動員しなかったとして、辞職を訴えた。

トランプ氏への主要な貸し手のドイツ銀行は、トランプ氏やトランプ氏の企業と今後取引を継続しないことを決定したと伝えられている。ニューヨークタイムズは、トランプ氏はドイツ銀行から融資を受けた3億ドルについて、今後数年で返済期限を迎えると報じている。

eコマースのプラットフォームのショッピファイ(Shopify)は先週、脅威や暴力につながる行為を禁止する規定に違反したとして、トランプ氏のグッズを販売するtrumpstore.comを取り下げたと発表した。

オンライン決済サービスプロバイダのストライプ(Striple)は11日、トランプ陣営のウェブサイトの決済処理を停止することを決定した。

全米ゴルフ協会(PGA of America)は10日、ニュージャージー州ベッドミンスターにあるトランプ氏所有のゴルフコースで2022年に開催を予定していた全米ゴルフ選手権について、決議によって契約を終了したと発表した。

全英オープンゴルフの主催団体も、スコットランドのトランプ・ターンベリー(Trump Turnberry)でのトーナメント開催を、「当面の間」実施しないと明らかにした。タイムズによると、トランプ氏は長年自身のゴルフ場での試合開催を望んでおり、在英米国大使に圧力をかけたこともあるという。

契約を解消する企業が相次ぐ一方、トランプ氏との関係継続を望む企業もある。マンハッタンにあるトランプ・インターナショナル・ホテルの1階にある高級レストラン「ジャン・ジョルジュ」は、最近テナント契約を更新。新型コロナで飲食業界が大きな影響を受けたことから、賃料は約25パーセント下がったという。

オーナーのジャン・ジョルジュ・ヴォンゲリスティン(Jean-Georges Vongerichten)氏は、議事堂襲撃には心を痛めているとしながらも、トランプ氏との関係を断つ意向はないという。「数週間で騒ぎは収まるだろう」とし、自分は「政治には介入しない。私たちは料理を提供するだけ」と語っている。