「誰も通報しなかった」NY市アジア人女性暴行事件

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白昼のマンハッタンの路上で、65歳のアジア人女性が暴行を受けた事件で、目撃者がいたにも関わらず、誰も警察に緊急通報していなかったことが分かった。ニューヨークポスト紙が報じた

ニューヨーク市警察は31日の記者会見で、事件に関する通報記録はなく、パトロール中の警察官が倒れていた女性を発見したと述べた。

事件現場の正面にある建物内の監視カメラからは、暴行の様子を見ている配達人の姿や、男が去った後、道路にうずくまる女性を前にドアを閉めるビルのスタッフらしき人物が確認できる。SNSでは、これらの男性に対する非難の声も多く寄せられていた。

事件が起きたのはタイムズスクエアに近いヘルズキッチン。建物のドアには、暴行を傍観していたとして、従業員の男性らを非難する張り紙が掲示された。

アジア人ヘイトクライム ニューヨーク
アジア人ヘイトクライム ニューヨーク
©mashupNY

ビルのマネジメント会社ブロドスキー・オーガニゼーション(Brodsky Organization)は30日、労働組合と協力して状況を調査するとし、この間、目撃した2人の従業員を停職させると発表した。

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一方で、国際サービス従業員労働組合(SEIU)のKyle Bragg委員長は、「彼らはすぐに救助を求めた」と従業員を擁護し、早急な判断をしないよう求めていた。

報道に対しSEIUの職員は、「救助」に関して「911に通報したとは特定していない」とニューヨークポスト紙に語っている。

NYPDのダーモット・シェイ警察委員長は会見で、事件の目撃者に聴取を行う予定だと述べた。「皆の怒りは良く理解している」と述べつつ、「従業員の立場に自身を置きかえることはできない」として、責任を負うのはあくまでも犯罪を犯した容疑者だと語った。

NYPDは31日、ホームレスの男ブランドン・エリオット(Brandon Elliot)容疑者(38)をヘイトクライムの暴行容疑などで逮捕した。

NYPD

被害女性はフィリピンから移住したVilma Kariさんで、教会に向かう途中で暴行を受けた。Kariさんは、骨盤の骨折と頭部を打撲する重傷を負った。現在は退院しているという。

なおエリオット容疑者は2002年、ブロンクスで42歳の母親Bridget Johnsonさんを刺殺し、第2級殺人罪で有罪判決を受けた。17年間服役した後、2019年12月に仮釈放され、生涯にわたり保護観察を受けることになっていた。

エリオット容疑者は、事件現場に近い40ストリートと8アベニューにあるホテル「フォー・ポインツ・バイ・シェラトン」で拘束された。ホテルは現在、ホームレス用のシェルターとして使用されている。