eBayで200万円の高値も!?ニューヨークのアート集団 血液入り「サタンシューズ」の自主回収でナイキと和解

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人の血を仕込んだナイキ製スニーカーを無断で限定販売したとしてナイキがブルックリンの会社を訴えた裁判で、販売済みのスニーカーを自主回収することなどで和解が成立した。複数のメディアが伝えた。

問題のスニーカー、通称「サタン・シューズ」は、エアマックス97の靴底部分に人の血液を入れてカスタマイズして販売したもので、ブルックリンのアート集団MSCHFが改造・販売を手掛けた。MSCHFは先月28日、ラッパーのリル・ナズ・X(Lil Nas X)と提携したコラボ商品として、666足限定で1足1018ドルで販売。そのうち665足が販売開始から1分足らずで完売した。残り1足は、リル・ナズ・X本人が購入者を選ぶため保管していた。

これを受けナイキは、商標権侵害でMSCHFを相手取りニューヨーク連邦地裁に提訴。「サタン・シューズは混乱や価値の希薄化を招き」、MSCHFの商品とナイキが「提携関係にあるとの誤解を与える恐れがある」とした。MSCHFは「個別に番号が振られた芸術作品」で混乱の元にはならないと反論したが、裁判所は8日に原告の訴えを認め、MSCHFに販売差し止め命令を出していた。

今回の和解内容の詳細は明かされていないが、ナイキによると、MSCHFはサタン・シューズを自主回収し、購入者には全額返金することに同意したという。ただ、限定もののスニーカーは通常付加価値がつきマニアの間で高値で取引されることから、実際に返品する顧客がいるかどうかは不明。

シューズの一部はeBayなどのサイトで高値で取引されている。中には2万ドルで転売を試みるセラーもいる。

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eBay Screenshot

法律事務所デベボワーズ&プリンプトンの知的財産担当でMSCHFの代理人を務めるデビッド・バーンスタイン弁護士(David Bernstein)は、MSCHFが芸術を通じて伝えようとしたメッセージは訴訟によって「大いに増幅された」とコメント。「MSCHFは、複数のブランドがコラボ文化に傾倒する滑稽さと、不寛容さが招く破滅を招くを伝えようとしていた」と声明を出し、「訴訟が解決し満足している」と語った。

リル・ナズ・X新曲とスニーカーのコラボ

サタン・シューズは、リル・ナズ・Xの新曲「Montero(Call Me By Your Name)」とのコラボプロジェクト。リル・ナズ・Xは2019年、同性愛者であることをカミングアウトしたが、新曲には、自分のセクシュアリティをたたえ、恥じることを否定するメッセージが込められている。

シューズの販売に先駆けてYouTubeに公開されたミュージックビデオには、リル・ナズ・Xが地獄で悪魔と激しくダンスし、悪魔の首を折って角を盗む前に、天国から地獄へと通じるポールを滑り落ちるシーンが収録されている。シーンは新約聖書中のルカによる福音書第10章18節『わたしはサタンが電光のように天から落ちるのを見た』に関連づけたもので、ペンタグラムのチャームが付いたサタンシューズにも「LUKE 10:18」と印字されている。

過去には「ジーザス・シューズ」

MSCHFは2019年にも、ナイキ・エアマックス97をベースに、靴底にイエス・キリストがヨハネから洗礼を受けたとされるヨルダン川の水を仕込んだ「ジーザス・シューズ」を販売している。ジーザス・シューズについては、ナイキは当時訴えを起こさなかった。ただ、今回の和解成立において同社が出した声明で、「MSCHFはナイキの承諾なくスニーカーを改造した。ナイキはサタン・シューズにもジーザス・シューズにも一切関与していない」と、過去の件にも言及している。