「ブラック・スワン」のダーレン・アロノフスキー(Darren Aronofsky)監督と、ジェニファー・ローレンス(Jennifer Lawrence)主演のサイコ映画「マザー!」(Mother!)が、9月15日より全米で公開となった。
オープニング週末の興行成績は、750万ドル(8億2500万円)。初登場第3位は、ジェニファー・ローレンスが過去に主演の映画としては、過去最低の数字を記録した。低調な成績もさることながら、批評家や観客の評判や意見が、真っ二つに分かれていることも話題となっている。
ストーリー
ビクトリア調の家に住む2人の男女。男性(ハビエル・バルデム)は、かつてヒット作を出した人気の詩人だったが、今はスランプに陥っている。パートナーの若い女性(ジェニファー・ローレンス)は、家をリノベーションしながら、静かな生活を送っている。ある日、2人の見知らぬ男(エド・ハリス)が現れる。彼は男性のファンだという。後に妻(ミシェル・ファイファー)も訪ねてきて、夫婦で居候をはじめる。そのうち2人の息子まで現れる・・・。
オープニングの興行成績
週末の興行成績は、全米2,368館で750万ドル(8億2500万円)を記録。一方、9月8日から公開をスタートしたスティーヴン・キングの小説をもとにしたホラー映画「IT(邦題:IT/イット “それ”が見えたら、終わり。」は、好調が続き、2週目は、4,103館で6,000万ドル(66億ドル)を達成。米国内の累計で2億1,870万ドル(240億円)となり、9月に公開された映画としては依然として過去最高を維持している。
ニューヨークタイムズが、監督に行ったインタビューによると、この作品は「マザーアース(ローレンス)と、ゴッド(バルデム)についての物語」で、気候変動や、人類による環境破壊を描いているという。
また、映画情報サイト、collider.comのインタビューでは、「作品は、聖書を元に構成されていて、どう人間が地球上に誕生したのかを議論するために参考にした。」とし、作品のテーマを、「マザーネイチャーの視点から、寓話という形式で描きたいと思った」と語っている。
監督は、現在世界で起こっている様々な現象を見て、脚本をわずか5日間で書き上げたという。作品の意図について、監督は多くを語らない姿勢を取っている。本作のミューズであり、実生活で監督の恋人のジェニファー・ローレンスは、「それを話さないなんて、恥ずべきことだわ。」と語っている。プロモーションについては、2人の意見が分かれているようだ。
21日、ニューヨークのMoMAで開催された試写会に登壇したアロノフスキー監督とジェニファー・ローレンス。
(ニュースでは、Q&Aの中で、冗談で中指を立てるローレンスのジェスチャーが話題となった)
Jennifer Lawrence jokingly flips off audience after mother! screening https://t.co/IoVXc2j6H6
— Entertainment Weekly (@EW) 2017年9月22日
気になる評判は?
オープニングの週末に出口調査を行うシネマスコープ(CinemaScore)によると、本作は A+からFの評価のうち最低の「F」を記録。調査を開始した1986年以来、「F」ランクは、わずか19作品しかないという。監督は、この観客の評価について、「パンチで殴られたみたいだ。」とハリウッド・リポーター紙に語っている。
批評家、口コミサイトのロッテントマト(rottentomato)では、批評家のトマトメーターは67%の一方、一般の観客は44%が気に入ったとしている。(9月22日現在)
批評家の評価も二分されている。
これらの低い評価の一方、作品を良いとする映画評は、17%ほど上回っている。
観客の感想も極端に分かれるコメントで溢れている。
手放しで評価する人の一方で、最低評価の1/2★をつける人も多い。
脚本に、聖書が参考されたことに関して、キリスト教徒への冒涜という意見もある。
ニューヨークタイムズのコメント欄にも、
などのコメントが相次いだ。NYタイムズは、この映画を嫌いとする読者のコメントを集めて特集を行った。
宣伝路線の変更? 新しいプロモーション
配給会社のパラマウントは、週末の結果を受けてか、19日に新たなテレビCMを放映した。映像タイトルは「mother! movie (2017) – “divided” 」とし、意見の分かれる観客の反応を逆手に、マーケティングに活かそうとする意図が伺える。
ナレーション:「過去数十年で、最も破壊的な映画”マザー”。ある人は好きだが、ある人は嫌う。しかし、誰も映画について話すことを止められない。”マザー”をあなた自身で体験しよう。」
22日にはポスターも公開。二分化された映画評のコメントが掲載されている。
#mothermovie has left audiences thinking. now is your chance to ask @darrenaronofsky your questions on @reddit #AMA https://t.co/XD9k7B7UT8 pic.twitter.com/Amnpfpn9de
— mother! (@MotherMovie) 2017年9月22日
興行成績に関しては、あたかもホラー映画のような広告宣伝で、観客を誘導したマーケティングのミスという声も聞かれる。アカデミー賞主演女優賞と主演男優賞の俳優を起用した作品の予算は、3千万ドル(約33億円)だという。
二分した評価と、公開後の路線変更は、今後の興行にどう影響を与えるだろうか。
見た人によって、好きか嫌いかが、はっきりと分かれる映画「マザー!」。日本では、2018年1月に公開が予定されている。
気になる人は、不快感や混乱などは承知の上で、劇場に行って確かめてみては、いかがだろうか。