メトロポリタン美術館2019年企画展テーマ発表「Camp: Notes on Fashion」

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メトロポリタン美術館は9日、来年5月からスタートするコスチューム・インスティチュート(Costume Institute)の企画展の新たなテーマを発表した。
「キャンプ:ファッションについてのノート」(Camp: Notes on Fashion)と題された企画展は、ニューヨークの作家スーザン・ソンタク(Susan Sontag)のエッセイ集「キャンプについてのノート」(Notes on Camp)(1964)に着想を得たという。

キャンプ(Camp)の概念に関して、ソンタクは「キャンプの本質は、技巧や誇張、不自然さへの愛」を表すとパルチザン・レビュー(Partisan Review)に執筆している。

企画展のキュレーションを担当したコスチューム・インスティチュートのアンドリュー・ボルトン(Andrew Bolton)は、「私たちは、極端なキャンプの時代に生きている。それは、たいてい中身のない軽薄なものとして敬遠されてきたが、社会から疎外されたカルチャーの人々にとって、実は、非常に洗練されたもので、力強い政治的なツールとなりうる。私は、これらに着目することは、文化的対話に非常に関連性があると感じている。」とテーマの選択理由を述べた。
政治的キャンプの例として、トランプ氏の名前をあげ、「大変時代にあったテーマ」だとニューヨークタイムズに語った
ボルトン氏は、ポピュリズムや保守派の台頭もキャンプのリバイバルだと見ており、「溢れるハイキャンプは、何かに対する反応である。」と述べている。

キャンプは、キッシュなどと同義語として語られることもあるようだが、その解釈は非常に難解なようだ。

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コムデギャルソンの川久保 玲は、キャンプについて、「まさに何か深くて新しいもので、私たちが必要としている価値感を表している。」と声明で述べた。
また、グッチのクリエイティブ・ディレクター、アレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)は、「チャンプという言葉は、かなりの頻度で誤解されている。キャンプはまさにハイ・アートとポップ・カルチャーを融合させるユニークな特徴を意味する。それは”キッチュ”ではない。メットのエキシビジョンは、現代におけるその意味を、ソンタグの視点に与えるだろう。」と述べている。

メットガラのホストは

Metガラ2018
Sky Cinema : Shutterstock.com

企画展に先駆け、6日には、恒例のファンドレイジングパーティ「メットガラ」が開催される。
今年のホスト役は、歌手のレディー・ガガ(Lady Gaga)ほか、歌手でグッチ(GUCCI)のキャンペーンモデルを務めるハリー・スタイルズ(Harry Styles)、女子テニスプレーヤー、セレナ・ウィリアムズ(Serena Williams)、グッチのアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)、そしてヴォーグ(Vogue)編集長アナ・ウィンター(Anna Wintour)が共同で務めることとなった。
グッチは、今回の企画展のスポンサーシップを務める。

洋服から絵画など175点を展示

企画展では、17世紀から現代までの、約175点のメンズ、ウィメンズウェアのほか、絵画、ドローイング、彫刻などが展示される。
セットデザインを担当するのは、シノグラファーのヤン・ヴァースウェイヴェルド(Jan Versweyveld)。

展示は、2つのセッションに分かれており、1つは、ベルサイユ時代やビクトリア朝からストーン・ウォールインの反乱を通じ、キャンプの起源や概念を読み解くもの。
もう1つは、現代のデザイナーが、キャンプをどのように表現しているかを紹介する。ここでは、ファッションがどのような形で、キャンプの持つ性質、皮肉、ユーモア、パロディ、模倣、技巧、芝居がかったものや、誇張を表現してきたかを鑑賞することができる。

紹介されるデザイナーは、英国のデザイナー、シャルル・フレデリック・ウォルト(Charles Frederick Worth)、バレンシアガの創設者、クリストバル・バレンシアガ(Cristóbal Balenciaga)、モロッコ出身のデザイナー、ジャンシャルル・ドゥ・カステルバジャック(Jean-Charles de Castelbajac)、ジョン・ガリアーノ(John Galliano), ジャン=ポール・ゴルティエ(Jean Paul Gaultier)、グッチの創業者、グッチオ・グッチ(Guccio Gucci)、マーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)、 英国のデザイナー、チャールズ・ジェームス(Charles James)、クリスチャン・ラクロワ(Christian Lacroix)、シャネルのデザイナー、カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)、共同ホストを務めるグッチのデザイナー、アレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)、フランスのデザイナー、ティエリー・ミュグレー(Thierry Mugler)、フランスのデザイナー、ポール・ポワレ(Paul Poiret、プラダやミュウミュウを手がけるミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)、サンローラン(Saint Laurent)、スキャパレッリを創設したエルザ・スキャパレッリ(Elsa Schiaparelli)、ジェレミー・スコット(Jeremy Scott)、アナ・スイ(Anna Sui)、ドナテッラ・ヴェルサーチ(Donatella Versace)、ヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood)の名が挙げられている。

Camp: Notes on Fashion

メットガラ:2019年5月6日
エキシビジョン:2019年5月9日〜9月8日
場所:The Metropolitan Museum of Art
1000 5th Ave, New York, NY 10028
www.metmuseum.org

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