マンハッタン地検 恩赦を受けたスティーブ・バノン元首席戦略官の訴追を検討か

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マンハッタン地区検事局は、詐欺事件で起訴され、今年1月にトランプ前大統領から恩赦を与えられたスティーブ・バノン元首席戦略官を、州法に基づいて訴追するか検討している。ワシントンポスト紙が事情に詳しい人物の話として伝えた。

元ブライトバートニュースの会長で、2016年の大統領選挙ではトランプ陣営の選対本部長を務めたバノン氏は、昨年8月、メキシコ国境の壁建設費用と銘打ってクラウドファンディングで集めた金を搾取したとして、ニューヨーク州南地区連邦検事局によって逮捕、起訴された。

連邦検事局の発表によると、バノン氏と他の3人は2018年12月、後に「We Build the Wall」キャンペーンとして知られることになる募金活動を開始した。トランプ政権の主要政策に関係する壁建設を期待する寄付者から数十万人から2,500万ドル以上を集めた。

キャンペーンの代表者だったBRIAN KOLFAGE氏は、寄付者に対して、集めた金は給料や報酬には一銭も使用せず、100%が使命と目的遂行のために使用されると約束。バノン氏は、ボランティア団体だと宣言していた。しかし、バノン氏は、非営利団体を迂回させるなどして100万ドルを受け取っていたことが判明。このうち数十万ドルを私費として使った。KOLFAGE氏は35万ドル以上を私的に使用していた。4人すべてが無罪を主張している。

なおバノン氏以外は、大統領恩赦を受けていない。

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バノン氏のケースを訴追するか、マンハッタン地検の重大経済犯罪局内部での議論はまだ初期段階だという。連邦検事局が、地検の事前調査に協力しているかも明らかではない。捜査機関の間で証拠を交換するために必要となる裁判所の「共有命令」を取得してるかも不明だという。

大統領の恩赦は、州法に基づく事案には適用されない。ワシントンポスト紙はまた、ロシア捜査に関連して有罪判決を受けた後、恩赦を与えられたポール・マナフォート氏のケースとは異なり、バノン氏は連邦レベルで判決が確定していないため、一事不再理の原則は適用されないだろうとしている。

トランプ前大統領の捜査は

マンハッタン地区検事長サイラス・バンス・ジュニア氏は、2018年からトランプ氏とトランプ一族の企業に対する刑事捜査を進めている。当初、2016年選挙活動中に支払われたとされるポルノ女優への口止め料に関するものだったが、その後、範囲を拡大し、現在は税金詐欺や保険詐欺、業務記録の改ざんにまで及んでいるとみられている。

バンス検事長は昨年8月、トランプ氏が利用している会計事務所Mazars USAに対し8年分の納税記録などの提出を求めたが、トランプ氏は現職の大統領は刑事捜査の対象にならないと主張し、訴訟を起こした。納税記録の提出を巡る争いは、現在、最高裁判所に持ち込まれている。

AP通信は先月、トランプ氏の元弁護士、マイケル・コーエン氏がマンハッタン地検から数時間におよぶ聴取を受けたと報じた。聴取はトランプ氏のビジネス取引に関するもので、特にトランプ氏の最大の貸し手であるドイツ銀行との関係に焦点を当てたものだったという。

コーエン氏は、2019年に行われた議会公聴会で、トランプ氏はしばしば、貸し手や潜在的なビジネスパートナーとの取引では資産価格をかさ上げする一方で、税務上の目的で資産価格を低く申告することがあったと証言していた。