ホームレス巡り、ダウンタウンの住民がNY市を提訴

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アッパーウエストサイド ホームレス ニューヨーク
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ニューヨーク市のホームレスの移動計画を巡り、マンハッタンのダウンタウンエリアの居住者らが市を提訴した。市は先月、約240人のホームレスをアッパーウエストサイドのホテルから、フィナンシャル・ディストリクトにあるラディソン・ホテル(Radisson Hotel)に移動すると発表していた。

原告は、ホームレスサービス局(DHS)が、ホテルを一時的にシェルターとして使用する契約は今年の10月12日で失効しており、新たなホテルへ移動することはできないと主張。
ホームレスの移動には「公衆衛生上の論理的根拠」がないと指摘し、市は緊急事態を利用して、ホームレスに対する「ミスマネジメントの隠蔽を試みている」と述べた。

さらに、アッパーウエストサイドでは、ロウアーマンハッタンにはない広範なソーシャルプログラムを提供できるため、ホームレスの人々は、このままアッパーウエストサイドに滞在することで、より良いサービスを受けることができると主張した。

新型コロナ対策でホテルに移動

市は4月、新型コロナウイルスの感染抑止対策として、ソーシャル・ディスタンスが困難なドミトリー形式のシェルターに滞在していた約1万人のホームレスを、市内のホテルへ移動させると発表した。パンデミック以前は、ホテルに滞在するホームレスは3,500人程度だった。

今年の夏頃、アッパーウエストサイドのザ・ルーサーン(the Lucerne)やベレクレア(Belleclaire)に滞在するホームレスが、公共の場で薬物摂取や自慰行為、排泄のほか、売店から物を盗むなどの問題が報じられた。滞在者の中には、性犯罪者が含まれていることも判明し、住民の間で安全への懸念が高まった。

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住民が弁護士を雇い、訴訟の準備を始めた後、DHSはホームレスの移動を決定。当初ミッドタウンへの移動を予定していたが、最終的にウォールストリートへと移動させると発表した。

訴訟費用に1億円

ニューヨークポスト紙によると、ラディソンホテルがホームレスのシェルターとして使用されることを知った付近の住民は、非営利団体ダウンタウン・ニューヨーカーズ(Downtown New Yorkers Inc)社を設立。Facebookのグループには数日間で2,600人が集まり、訴訟費用として約100万ドルが募られた。

同地域には既に4カ所のシェルターがあるという。団体の共同創設者で原告の1人、クリストファー・ブラウン(Christopher Brown)氏は、地元の人々は家族を心配していると述べ「子供たちが外で、精神疾患者やドラッグ、アルコール中毒者から嫌がらせを受けることになるだろう」と同紙に語っている。

市法務部の広報担当者は、住民による訴訟を「恥ずべき試み」と非難した。「市全体は、必要とする人々に安全なシェルターを提供する道徳的かつ法的義務がある。–前例のないパンデミックにおいて、ホテルをシェルターとして提供することは、市の非常権限を正当的に行使しただけでなく、絶対的に正しい」と反論した。