ロシア死の商人の釈放は「降伏」、元大統領補佐官 バイデン氏を痛烈批判


トランプ政権で大統領補佐官(国家安全保障担当)を務めたジョン・ボルトン氏は、米女子プロバスケットボールのブリトニー・グライナー選手とロシアの武器商人ビクトル・ブート氏の1対1の囚人交換を「バイデン政権の大きな誤り」と厳しく非難。世界中にいるアメリカ人を危険にさらすと警告した。

バイデン大統領は8日、今年2月にモスクワの空港で大麻成分入りの「ハシシオイル」を持ち込んだとして拘束、9年6カ月の実刑判決を受けたブリトニー・グライナー選手が、ブート氏との囚人交換により釈放されたと発表した。

2018年にスパイ容疑で拘束され、ロシアで服役中の元海兵隊員ポール・ウィラン氏を含めた2対1の交換の実現も期待されたが、ウィラン氏の釈放は実現しなかった。

CBSニュースのストリーミング放送番組に電話で出演したボルトン氏は、グライナー選手の釈放は感情的に理解できるとした上で、バイデン政権は「非常に悪い間違い」を犯したと指摘。「取引でも、交換でもない。降伏だ」と述べ、「世界中のテロリストとならず者国家がこれに注目するだろう。将来、モラルや良心のとがめのない者によって捕らえられ、交渉の切り札として利用される可能性のある他のアメリカ人を危険にさらしかねない」と懸念を示した。

ロシアがブート氏の返還を切望する理由について聞かれると、詳細は話せないとしつつ、トランプ政権時代にブート氏とウィラン氏の交換の可能性があったと説明。ただし「非常に正当な理由」から取引を結ばなかったと明かし、ブート氏釈放に伴う危険性を改めて示唆した。さらに今回の囚人交換は「モスクワのワシントンに対する大きな勝利だ」と主張したほか、「(米国は)アメリカ人を取り戻すために、何でも喜んで取引すると言っているようなもの」と述べるなど、誤ったメッセージをテロリストらに送ることになると警告した。

テロリストグループや独裁政権に兵器を売りさばき、世界各地で紛争に関与したブート氏は「死の商人」の愛称で知られ、2005年の映画「ロード・オブ・ウォー」でニコラス・ケイジ扮する武器商人のモデルにもなった。おとり捜査によってタイで拘束され、2010年に米国に身柄が引き渡された。翌年、米国人の殺害を共謀した罪や、外国のテロ組織に指定された集団に物理的な支援提供を計画したなどの罪で有罪となり、25年の禁錮を言い渡された。

当時のブート氏のおとり捜査に加わった当局者も、ボルトン氏と同様の見解を示した。

麻薬取締局の地域局長で、ブート氏拘束に貢献したトム・パスカレロ氏はYahooスポーツのインタビューに「世界中でアメリカ人の殺害が可能な武器取引を組織できるような人物が、囚人と交換されるとは信じられない」と危険性を指摘。「国民が海外で拘束されたら、米国は交渉、譲歩し、プーチンのような人々の要求を黙って飲む可能性が常にあるという、恐ろしいメッセージを送ることだ」と懸念を示した。


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