首都ワシントン 51番目の州に?下院で法案通過

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米議会下院は22日、コロンビア特別区(ワシントンD.C.)を州にする法案を216-208の賛成多数で可決した。

同法案が下院を通過するのは昨年に続いて2回目。前会期は共和党のミッチ・マコーネル院内総務が採決をさせなかった。

上院で採決が同数となった場合、カマラ・ハリス副大統領がタイブレーク票を投じることができる。しかし、共和党で法案を支持している議員はいない。共和党がフィリバスターを発動した場合、民主党が、これを打ち切って採決に持ち込むために必要となる60議席を確保するのは厳しいとみられている。もし本会議で採決にいたった場合でも、民主党議員がすべて賛成に回るかあきらかでない。

コロンビア特別区は、1790年にコロンビア特別領として創設された際、住民には選挙権が与えられ、メリーランド州またはバージニアの住民として票を投じることができた。しかし、1801年のコロンビア特別区自治法の制定によって、連邦議会の管轄域と指定され、住民は大統領選を含むすべての連邦選挙の投票権を失った。1961年に憲法修正23条が批准され、大統領を選出する権利を取り戻した。1970年に下院に投票権を持たない代表を選出することが許されたが、今日まで投票権のある代議員を連邦議会に送れずにいる。

コロンビア特別区を州に昇格する法案は、同区選出のエレノア・ホルムズ・ノートン下院議員(民主党)が1991年から推進している。法案では、首都をナショナルモールとモニュメント、ホワイトハウス、最高裁判所、その他の連邦議会の建物に縮小し、残りを州とする方法を提案している。新たな州の名は、奴隷制廃止論者のフレデリック・ダグラスにちなみ「ワシントン・ダグラス・コモンウェルス州」とするとしている。

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ワシントンポスト紙によると、共和党議員は、州にする唯一の方法は、憲法の改正が必要との見解で一致している。さらに一部は、州とするには「腐敗しており、経済的に政府に依存しすぎだ」と反対している。トム・コットン上院議員(共和党 アーカンソー)は昨年、都市の主要産業は「ロビー活動と官僚組織」だけの「政府の付属物」に過ぎないと主張していた。

またミッチ・マコーネル院内総務(共和党 ケンタッキー)は、州にさせようとする動きは、2人のリベラル上院議員を選出して権力固めをしようとする民主党の試みにすぎないと批判。過去に「完全な社会主義」キャンペーンだと述べるなど、反対姿勢を固持している。

2020年大統領選挙では、バイデン氏は首都ワシントンで90%以上の票を獲得している。

州に昇格した場合、上院2議席と下院1議席が与えられる。下院の議席は人口に応じて与えられる。下院議員が1人の州はバーモント州、デラウエア州、ワイオミング州、アラスカ州、ノースダコタ州、サウスダコタ州、モンタナ州がある。

反対派の主張に対して、ノートン議員は、議会は新たな州を認める権限を有しており、州にするために憲法改正は必要ないとしている。

なお憲法では、政府所在地(10平方マイルを超えてはならない)について、議会に専属的な立法権を行使する権限があると規定している。

またノートン議員をはじめとする支持者は、法案はすべてのアメリカ人が議会で公平に代表されることを確実にするもので、民主党寄りの地区であることとは関係がないと反論している。

さらにモンデア・ジョーンズ下院議員(民主党 ニューヨーク)は22日、本会議の議論で、共和党議員の人種差別的なほのめかしはたくさんだと批判。「ほとんどが有色人種の70万人の権利を剥奪するのに、誠実な議論などない」と訴えた。

国勢調査によると、ワシントンD.C.の人口構成は、アフリカ系アメリカ人46%、ヒスパニック11%、アジア系4%。人口は705,749人で、バーモント州(623,989)とワイオミング州(578,759)よりも多い。一人当たりの連邦税の納税額はどの州よりも高く、全体では他の20州を上回る。

さらに推進派は、1月6日の議事堂襲撃事件も、法案成立が必要な理由だと主張している。

USA Todayによると、州知事には州兵を派遣する権限があるが、ミュリエル・バウザー市長は、市長の立場であることから、1月6日に派遣することできなかった。州兵を呼ぶ権限は、大統領と国防長官、陸軍長官にあるという。

バイデン大統領は法案を支持している。20日、ホワイトハウスは声明で「代表なくして課税あり」と「自治の否定」は「国家の基礎たる民主的価値観に対する侮辱」と述べ、「ワシントン・ダグラス・コモンウェルス州を51番目の州として確立することは、連邦をより強固かつ公正ならしめるものだ」と発表した。

なおシンクタンクのData for Progressが実施した最近の世論調査では、国民の54%が州にすることを支持している。