米Vogue表紙でハリー・スタイルズがドレス姿。男の女性化、目新しさないと非難

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英国のシンガーソングライター、元ワン・ダイレクションのハリー・スタイルズ(Harry Styles)が、米Vogue(ヴォーグ)12月号の表紙に起用された。男性が単独で表紙を飾るのは、今回が初めて。

ハリー・スタイルズは、グッチの花柄のロングドレスと、黒のタキシードジャケットを着用。紙面でもコム・デ・ギャルソンのキルトや、ハリス・リードのペチコート姿を披露している。

写真を撮影したのは、黒人の若手フォトグラファー、タイラー・ミッチェル(Tyler Mitchell)氏。2018年、ビヨンセをモデルに起用し、黒人カメラマンとして初めて米Vogueのカバー写真を撮影したことで話題となった。

保守派から非難の声

ジェンダーニュートラルなスタイルを表現したものだが、保守派の論客からは「男の女性化」だとして非難の声が上がった。

キリスト教保守派のラジオホスト、エリック・エリクソン(Erick Erickson)氏は「バイデンは通常に戻ることを約束することで当選した。そして左派は一斉に男にドレスを着せた」とツイートした。

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右派の活動家キャンディス・オーウェンズ(Candace Owens)氏は「強い男なくして、社会は存続できない」とツイート。「東洋はそれを知っている。西洋で男性の着実な女性化と、マルクス主義が同時に教育されているのは、偶然ではない。これは明白な攻撃だ。男らしい男性を取り戻せ」と述べた。

コメンテーターのベン・シャピーロ(Ben Shapiro)氏もオーウェンズ氏に賛同し、「男性がドレスを着るのは、男らしさに対する判定ではないと主張するような人は、完全に人をバカ者扱いしている人だ」とツイートした。

これに対しリベラル派も反論。スタイルズ氏が主演の映画「Don’t Worry Darling」を監督している女優オリヴィア・ワイルド(Olivia Wilde)氏は、オーウェン氏のツイートに「哀れな人」とコメント。女優ジャミーラ・ジャミル(Jameela Jamil)氏も「男らしさは自分が決めるものだ」とツイートした。

MSNBCはイエス・キリストは膝丈のチュニック(当時の男性が着用していた下着)を着ていたと述べ、イングランド王のヘンリー8世や、裁判官のローブ(フランス語でドレスを意味する)の例を挙げ、男らしさとドレスは何ら関係がないと指摘した。

なお、テレビ番組司会者ピアース・モーガン(Piers Morgan)氏は、グッドモーニングブリテンで「反対も賛成もしないが、ちょっと奇妙だ」とコメント。「彼はファッションの境界線を押し広げた。素晴らしいという女性もいるだろうが、夫がドレスを着て夕食会に来たら、何人の女性がいいと言うだろうか?それが問題だ」と語った。

目新しさはない

ノンバイナリーを表現するには、スタイルズ氏の起用は不十分という声も上がった。
デイリービーストは「歴史的かもしれないが、急進的ではない」と題するコラムを掲載。「ハイファッションの世界では、ドレスを着る男性は新しくなければ、超越したものではない」述べ、ミック・ジャガーのハイドパークでのコンサートでの衣装や、カート・コバーンのThe Faceマガジンの表紙、ゴルチエが1985年にデザインしたメンズのスカートなどを例に挙げた。

スタイルズ氏はVogueのインタビューで「男女の洋服の障壁を取り除くと、遊ぶことのできるアリーナが開ける。それは、自ら制限していた人生のバリアを解放するのに似ている。洋服で遊ぶのは楽しいものだ」と語っている。同氏はこれまでにも、レッドカーペットや雑誌の表紙で、性差流動性のある洋服を着用してきた

スタイルズ氏は昨年12月に表紙を飾ったガーディアンで、コム・デ・ギャルソンのスカートを着用している。インタビューで「興味を掻き立てるために、性の曖昧さを撒き散らしているわけではない」と述べ、「物事を特定の方法で見せたい。ゲイやストレート、バイセクシャルに見えるからではなく、クールだからだ。セクシュアリティはただ楽しいものだ」と語った。自身のセクシュアリティに関する質問に関して、「どうでもいいことだ」とスタイルズ氏は回答を拒否している。

デイリービーストは、白人でシスジェンダーのスタイルズ氏は「ドレスを着用することの意味について、あまり考えすぎる必要がないという特権を有している」と指摘。また「誇らしくドレスを着用した初めての男性でなければ、それについて何かを言いたい人物ではない」と述べた。
Vogueの決定は「極めて平凡な選択肢」で、同誌の多様化の遅れやインクルージョンの欠如を示すものだ述べている。