戦死した「キーウの亡霊」架空の人物だった!伝説は終わらない

キエフの亡霊
Twitter@Ukraine

戦死したと報じられたパイロット「キーウの亡霊」が、架空の人物であることがわかった。

英紙ロンドン・タイムズは先月29日、情報筋の話として、ロシア軍の戦闘機40機以上を撃墜したエース・パイロット、「ゴースト・オブ・キーウ」こと、ステファン・タラバルカ(Stepan Tarabalka)少佐(29)が、「圧倒的なロシア軍」と空中戦を展開し、撃墜されたと報じていた。

タイムズの報道を元に、米国でもニューヨークポスト紙などが相次いで報じたことで、ウクライナの「ヒーロー」と噂されていたキーウの亡霊が、実在していたというニュースが駆け巡った。

この報道を受け、ウクライナ空軍は31日、「キーウの亡霊は、ウクライナ人によって創られたキャラクターのスーパーヒーロー・レジェンドだ!」とFacebookに投稿し、報道内容を否定した。空軍の発表によると、タラバルカ氏は3月に戦死したことは事実だが、40機を撃ち落したという事実はない。”情報筋”を元にした報道に関して、情報源を確認するよう求めている。

なおウクライナ軍は25日、タラバルカ氏は死後に「ウクライナの英雄」の称号のうち、軍人として最高の栄誉となる「金星章」が授けられたと発表している

ヒーロー伝説の始まりは?

伝説の発端となったのは、ネットに出回ったミグ29戦闘機の動画だった。

ロシア侵攻が始まった2月24日、ウクライナ政府は、6機のロシア戦闘機を撃墜したと発表。ネットでは、敵機を次々と撃墜するエース・パイロットがいるとの噂が広がり、「キーウの亡霊」(ghost of kyiv)と名付けられ、市街地の上空を飛行するミグ29戦闘機の動画とともに拡散された

その存在については疑問視されていたが、ウクライナの勝利を願う人々の間では、守護神としての名声を獲得し、ヒーローと称賛された。

その数日後、ウクライナ政府もキーウの亡霊の存在を認めるツイートを投稿した。敵機を撃墜するパイロットの映像とともに「ウクライナは第二次大戦以降、初めてのエースを輩出した。人々は彼を”ゴースト・オブ・キーウ”と呼んだ。まさにそうだ。侵攻するロシア軍の空軍にとって、悪夢となっている」とツイート。動画の中で、エース・パイロットは開戦後2日間で、10機のパイロットを打ち落としたと説明していた。

その後も、ウクライナ議会の元議員Ihor Mosiychuk氏が、「キーウの亡霊は撃墜されたが、生き残った。基地に戻り、別の戦闘機に乗り換え、敵機を撃ち落した」とFacebookに投稿したほか、現地メディアのキーウポストが「ゴーストは生きていた。少なくとも49機を撃墜した」とキャプションをつけ、パイロットの写真を投稿したことで、実在する人物の話として、武勇伝が広まっていった。

伝説は終わらない

実在の人物ではなかったことが明らかにされたが、ウクライナ空軍はツイッターで「#GhostOfKyivは、まだ生きている。キーウと周辺地域の防衛に成功している戦術航空旅団の優秀なパイロット全体の精神を表すものだ」と投稿。ヒーロー物語は終わらないとの主張に、多くの賛同が寄せられている。

ウクライナのレシア・バシュレンコ議員も「彼は殺すことができない。亡霊だからだ。彼はレジェンドだ。わわわれの上空を守るため、どこからともなく現れる全ての勇敢なパイロットだ」と投稿した。

ニューヨークタイムズは、一連の騒動について「ロシアとの情報戦争で最も成功したプロパガンダの一つ」と評した。戦死報道から一転。キーウの亡霊の伝説は終わらない。