ウディ・アレンの性的虐待疑惑のドキュメンタリーHBOで放送へ

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ウディ・アレン
Denis Makarenko / Shutterstock.com

映画監督のウディ・アレン氏(85)の養女に対する性的虐待疑惑を扱ったHBOのドキュメンタリー「Allen v. Farrow」(全4回)が、21日に放送される。

アレン氏には1990年代、養女のディラン・ファローさんに性的虐待をはたらいた疑いがもたれている。

作品では、当時7歳のディランさんが母親のミア・ファロー氏に、アレン氏から「隠部を触られた」と告白するホームビデオや、ファロー氏がアレン氏に虐待疑惑を追求する電話の音声などが初めて公開される。

ヒップホップ界の大物ラッセル・シモンズの性的暴行疑惑に関する映画「オン・ザ・レコード」(On the Record)を手がけたカービー・ディック(Kirby Dick)とエイミー・ジーリング(Amy Ziering)が監督を務めた。撮影に3年半を費やした。

衝撃の内容が明らかに

アレン氏は「アニー・ホール」や「マンハッタン」などでヒット作を出し、絶頂期だった1979年、ミア・ファロー氏と結婚。同年、音楽家のアンドレ・プレヴィン氏と離婚したミア氏には、スン・イー(Soon-Yi)さんや、モーゼス(Moses)さんらの養子がいた。

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デイリーメールによると、ミア氏は作品で「かわいいブロンドの女の子」を養子にしたいというアレン氏の提案で、1985年にテキサス州からディランさんを養子に迎えたと明かしている。

当時7歳のディランさんは、母親の撮影するホームビデオで、2度の性的虐待を受けたと話している。アレン氏がソファーの上で「プライベート(陰部)を触り、脚に息を吹きかけた」と語ったほか、屋根裏部屋へと誘われ、背後から陰部を触られたと打ち明けている。

現在35歳となったディランさんは、屋根裏部屋での出来事について「彼は私に性的暴行をはたらいた。弟の電車セットを見つめていたのを覚えている」と振り返っている。

母親のミア氏は1992年1月、スン・イーさんの裸の写真を発見した。アレン氏への未練とスン・イーの実弟、モーゼスさんを育てていたことから離婚をためらったが、8月にコネチカット州で、ディランさんへの性的虐待を友人を通じて知り、離婚を決意したという。

アレン氏とスン・イーさんの関係は、彼女が高校生の時から続いていた。作品には、昼食時に学校を抜け出し、アレン氏を訪問していたというドアマンの証言や、部屋のコンドームを片付けたと話すメイドのインタビューなども含まれている。なお2人は1997年に結婚しており、婚姻関係は現在も続いている。

疑問の残る捜査

コネティカット州警察とニューヨークの児童福祉サービスは、アレン氏の虐待を調査したが、立件されずに終わった。

コネティカット州の捜査では、イェール・ニューヘブン病院の報告書は、ディランさんを信頼できる証人になり得ないと結論付けた。アレン氏は警察のポリグラフを拒否し、自身で実施したものを提出したという。検察は、ディランさんの精神面が不安定で年齢も低いとして起訴を見送った。

ニューヨーク州の児童福祉サービス局の職員が「著名人など注目度の高い案件は”ビッグウィッグ”(重要人物)に引き継がれ、何もすることができない」と記した文書も作品で公開される。

疑惑が再浮上

起訴は見送られたものの、ディランさんは2013年以降、ヴァニティフェアーや、ニューヨークタイムズを通じて、アレン氏による性的虐待を告発した。
2017年にロサンゼルスタイムズに寄せた寄稿では、アレン氏と仕事を継続するスタジオや俳優仲間らを厳しく非難した。その後共演者のレベッカ・ホールやティモシー・シャラメ、セレーナ・ゴメスらが出演料を寄付すると表明した。
2018年にはテレビ番組で初めて、性的虐待について語った。

弟でジャーナリストのローナン氏は、#MeTooムーブメントの発端となった大物映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインのセクハラ疑惑を報じたジャーナリストの1人。
2014年のゴールデングローブ賞で、アレン氏が功労賞を受賞した際、「アニーホールの公開後、7歳の時に彼から虐待を受けた事を公表した女性については触れられたか?」とツイッターで非難している。2016年のハリウッドレポーターのコラムでも、ディラン氏の告発を擁護した。

一方、アレン氏は一貫して疑惑を否定している。ディランさんの証言は、スン・イーさんとの関係に嫉妬したミア氏が子供に嘘を吹き込んで証言させたものと主張している。

スン・イーさんは2018年、ニューヨークマガジンのインタビューで沈黙を破り、アレン氏を擁護。ミア氏から精神的かつ肉体的な虐待を受けていたと告発し、話題となった。また弟のモーゼさんも同年、アレン氏を擁護する記事をニューヨークタイムズに掲載した。

映画公開も見送り

アマゾンは2018年、撮影済みの映画「レイニー・デー・イン・ニューヨーク」の米国での劇場公開を見送り、残り3作品の契約を破棄した。

2019年3月、アシェット・ブック・グループは回顧録「Apropos of Nothing」の出版を取りやめると発表した。(その後回顧録は、アーケード・パブリッシングから出版された)