投票システムがトランプ票を消去?トランプ陣営、新たな選挙疑惑を拡散

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トランプ大統領は15日のツイートで、「バイデンは選挙が不正操作されたから勝利した」と述べつつ、ドミニオン社は「急進左派の民間企業」で、製品は「評判が悪く、テキサスでは資格が認められないほど役立たずの設備だ」だと投稿した。

ドミニオン社(Dominion Voting Systems)はカナダ発の選挙関連機器メーカー。北米で投票機や集計機といったハードやソフトウエアを販売しており、米国内ではデンバーに本社を構える。ペンシルベニア大学の調査によると、2016の選挙では、7100万人の有権者が同社のテクノロジーを使用している。

トランプ氏は12日の投稿でも、同社に言及。ドミニオンのシステムによって票の削除や、バイデン氏へのすり替えが行われたと主張していた。

「報告。ドミニオンは270万のトランプ票を削除。データアナリストは、ペンシルバニア州で22万1000のトランプ票がバイデン票へとすり替えられていたことを発見。94万1000のトランプ票が削除された。ドミニオンのシステムを使う州は、43万5000もの票がトランプからバイデンにすり替えられた」

トランプ氏のツイートの元になったのは、右派メディアのワンアメリカニュース(OAN)のLilia Fifield氏によるレポート。Fifield氏は番組で、エジソン・リサーチによる「未監査の分析データ」によるものだとして、「ドミニオンのシステムを使用している州では、43万5000票もの票がトランプ氏からバイデン氏にすり替わっている可能性があり、さらに270万票ものトランプ票が削除されている。」と報告していた。

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エジソン・リサーチは投票データの分析や出口調査を実施している企業で、ABCやCBS、CNNなど報道機関にデータを提供している。同社は、OANの元になったデータの存在を否定している。

トランプ氏の一連のツイートは、異議が唱えられているとして、警告ラベルが表示されている。

トランプ陣営 テレビで拡散

15日、陣営のリーガルチームを主導する弁護士がメディアに出演し、ドミニオン社に関する様々な主張を展開した。

Foxビジネスに出演したルディ・ジュリアーニ氏は、ドミニオンは米国企業ではなく、海外企業だと述べ「ベネズエラと親密なつながりがあり、それゆえ中国だ。(ドミニオンは)他国の選挙を盗むために使用されてきたベネズエラの企業のソフトウエアを使用している」と主張した。ジュリアーニ氏はソフトウエアはSmartmatic社が開発したものだと説明。Smartmaticはウゴ・チャベスとその2人の仲間が立ち上げたと述べ、いまだに同社を所有していると語った。また「ドミニオンはすべてをSmartmaticに送っている。われわれの票は海外に送られているのだ」と主張。また、Smartmaticのチェアマンは、ジョージ・ソロス氏と近しい関係にあるなどと語った。

続けて同番組に出演した陣営の弁護士、シドニー・パウエル氏は、システムは「選挙を不正操作するよう設計された」と主張。「われわれは複数の州で選挙結果を覆すために修正を行なっている」と述べ、トランプ氏は「数十万票ではなく、数百万票で勝利していた」が「票は、その目的のために設計されたシステムによってシフトさせられた」と語った。

シンディ氏は、ソフトウエアの設計に関する宣誓供述書があると述べる一方、どのように不正を証明するのかと問われると、「証明する方法はたくさんあるが、持っているものすべてを全国放送では話すことができない」と語った。また裁判で成功する可能性について聞かれると「第一に、わたしは証明できないとは、決して言っていない。次に、証拠が非常に早く入ってくるので、すべてを処理することさえできない」と回答した。さらにドミニオンを購入した州で、同社がキックバックを提供していた証拠があると述べ、州の職員は、犯罪捜査の対象となるべきだと主張した。

ドミニオン社「断固として否定する」

ドミニオン社は自社のホームページで、投票すり替えの「誤まった主張」について、「断固として否定する」と発表した。

同社は、「競合」のSmartmaticとは、協働しておらず、提携関係や資本のつながりはないと説明。またSmartmaticのソフトウエアは使用していないと述べている。

一方、2009年にフィリピンで、Smartmaticがドミニオン機器の使用のライセンスをしたことがあるほか、Smartmaticが以前所有していた米国の民間企業、Sequoiaの特定の資産を、2010年に購入したと説明している。

トランプ氏の「ペンシルバニア州だけで94万1000票を削除した」という主張についてはありえないと反論。ドミニオンがサービスを提供したペンシルバニア州の14の郡では、投票率76%で、130万人が投票。このうちの52%に相当する67万6,000票をトランプ氏が獲得しているとして、不可能だと説明した。

海外企業?政治的偏向は?

ドミニオン社はホームページで、米国企業であり、政治的偏向はないと説明している。過去のロビー活動については、2014年にクリントン・グローバル・イニシアティブの会合で、一度だけ「フィラントロフィーの約束」をしたことがあるが、クリントン財団は株を所有しておらず、企業運営に関与していないと述べている。

AP通信は、ドミニオンは2014年にクリントン財団に25,001ドルから50,000ドルの間の寄付をしていたが、同社のロビイストは共和党のミッチ・マコーネル上院議員にも寄付していたと報じている。出資比率については、下院委員会に同社のJohn Poulos氏が提出した書簡を元に、75.2%がニューヨークが拠点の未公開株式投資会社のStaple Street Capitalが所有しており、カナダ国籍のPoulos氏が12%所有していると伝えた。このほかに5%以上保有する投資家はいない。

APはまた、民主党のナンシー・ペロシ下院議長やダイアン・ファインスタイン下院議員、クリントン財団が同社に利害または影響を有しているという噂について、根も葉もない話だと結論づけている。

エジソン・リサーチはデータの存在を否定

エジソン・リサーチ社のLarry Rosin代表は、トランプ氏がツイートしたOANのレポートの元になった「未監査の分析データ」について、Dispatch Fact Checkに「エジソン・リサーチでは、このようなレポートを作成しておらず、不正投票についても認識していない」と否定した。

政府内部が否定「票が失われた形跡は全くない」

米国土安全保障省サイバーセキュリティー・インフラストラクチャー・セキュリティー庁(CISA)は12日、調査結果として、今月の大統領選で票が失われた形跡は全くないとを発表した。発表では「票が取り除かれる、失われる、改ざんされる、不正なアクセスを受けるといったことが起きた形跡は全くない」としており、「今回の選挙の安全性と完全性に最大限の自信を持っていると断言できる」と、不正投票の疑惑を否定した。

このほか、投票インフラストラクチャを研究する非営利団体、OSETインスティテュートの選挙技術専門家であるエドワード・ペレス氏は、ニューヨークタイムズの取材に、ドミニオンの投票システムに関する疑惑は「せいぜい誤報であり、多くの場合、全くの偽情報である」と返答。「票が記録されたり誤って集計されたと考えられるようなドミニオンのソフトウエアの特定の事柄または欠陥に関する証拠は知らない」と述べている。