NY州、ワクチンの不正入手に罰金1億円

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ニューヨーク州のクオモ知事は28日、新型コロナウイルスのワクチンを不正に入手または配布するなどの詐欺行為に携わった医療供給者に対し、最高100万ドル(約1.04億円)の罰金を科し、州の免許を取り消す可能性があると発表した。

クオモ氏は、新たな規定は「抑止力」の意味合いが強いとしている。医療供給者には、医師や看護師、薬剤師、認可を受けた医療専門家も含まれる。

ニューヨークポスト紙は26日、パーケア・コミュニティ・ヘルスネットワーク(ParCare Community Health Network)がワクチンを不正に提供していたと報じた。これを受け、ザッカー・ハワード州保健局長は同日、同医療機関が不正に入手したワクチンを他の施設へ転送した上、一般人に接種した可能性があると発表。州警察による捜査に協力すると述べた。

ニューヨーク州では、ワクチン接種に厳格な優先順位を設けており、感染リスクの高い医療従事者や、介護施設の入居者、スタッフからワクチン接種を始めた。

クオモ氏は会見で、「ワクチンは価値の高い商品であり、多くの人が入手したいと思っている。ワクチン接種の過程で詐欺が起きるだろう。人間性と市場の必然的な関係だ」と語った。
現在「犯罪活動の可能性」で調査対象となっている機関は、パーケアのみだと発表している。

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捜査を担うレティシア・ジェームズ(Letitia James)州司法長官は「ワクチンがコミュニティを保護するために、最大限に効果を発揮するよう、われわれ全員が同じ配布計画に従わなければならない。そのプロセスの回避を試みる者は容赦しない」と強く取り締まる姿勢を示した。

パーケアは、ブルックリンのボローパークやベンソンハースト、ウィリアムズバーグ、マンハッタンのイーストハーレム、アップステートのモンロー地区など正統派ユダヤ教徒の多いエリアに医療施設がある。

同社は16日、「ワクチンが入手可能に。先着順」という告知をツイッターに投稿。食品衛生局(FDA)に認可されたと虚偽の記載をしていた。

ニューヨークタイムズによると、パーケアは、これまでに合計2300回分のワクチンを受け取り、既に850回分以上を使用したという。
不正が発覚したことを受け、担当者は、ワクチンは保健局や米疾病対策センター(CDC)の手順に従い入手したと述べつつ、それらは捜査のために保健局に返却したと明かしている。

ニューヨークポストによると、パーケアのゲイリー・シュレシンジャー(Gary Schlesinger)CEOは、地元政治家とのパイプが強く、デブラシオ市長やジェームズ州司法長官、ブルックリン区長で市長選に立候補中のエリック・アダムス氏など親交があるという。

既に60代の父親がワクチン接種を受けたという男性は、ウィリアムズバーグの診療所で接種を受けることができるのは、よく知られていると同紙に語っており、どこから入手したのは不明だと述べた。

クオモ政権との対立

超正統派ユダヤ教徒のコミュニティでは、最近までクラスターが発生するなど、パンデミックによる大きな被害を受けている。
州は拡大防止策として、礼拝所の人数制限を行うなど、厳しい制限を設けた。これに対し住民は、信教の自由に制限を設けるべきではないとして、抗議デモを行い、政権を提訴するなど強く反発していた。

連邦最高裁判所は25日、州がコロナ対策として実施した宗教施設の人数制限に関して、超正統派ユダヤ教とカトリックの宗教団体の訴えを支持する判決を下している

検査陽性率は8%超

ニューヨーク州の27日の検査陽性率は8.33%に上昇した。クオモ氏は「クリスマス中の感染拡大の可能性について警戒してきたが、(クリスマス後)2日間で上昇するのは劇的で、非常に早い」と述べ、原因について調査するとしている。

ニューヨーク州で、初回のワクチンを接種したのは14万人に達した。州は今週、約25万9,000回のワクチン(ファイザー13万9,000回分、モデルナ11万9,600回分)を受け取る予定。