クオモ政権、老人ホームの死者数巡る新たな隠蔽疑惑

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ニューヨーク州のクオモ知事の側近の働きかけにより、高齢者施設における新型コロナウイルスの被害に関する保健局の報告書から、総死者数が取り除かれていたことがわかった。ニューヨークタイムズが報じた。

問題の報告書は州保健局が昨年7月に発表したもの。死亡者数のデータに、施設から病院に入院して死亡した人数が含まれておらず、過小報告の可能性があるとして、発表直後から完全データの提示を求める声が上がっていた。

タイムズが入手した保健局のドラフトにある表には、総死者数は9,000人以上とされ、当時クオモ政権が引用していた数値よりも50%近く多かった。表は他州と比較したもので、ニューヨーク州に次いで高齢者施設の死者数が多かったのはニュージャージー州で6,150人となっていた。報告書の作成はマッキンゼーが協力した。

保健局から上がってきた報告書の変更に関与したのは、知事の側近のメリッサ・デローサ氏、州金融サービス局トップのリンダ・レースウェル氏、クオモ氏の元顧問で、パンデミック対応のために政権に戻ったジム・マラトラス氏だという。いずれも公衆衛生の専門家ではなかった。

クオモ政権は今年1月、州司法長官から過小評価の指摘を受けた後、病院を含めた高齢者施設の総死亡者数を公表した。

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この後、側近のデローサ氏が2月10日の州議会議員との会話の中で、完全データの公表が遅れた理由について、トランプ政権に政治利用されることを懸念し「凍結した」と説明したことが判明。隠蔽の意図を示すものだとして、責任の追求を求める声が上がった。

クオモ氏はこの直後、公表が遅れたことを認めつつ、理由は、米司法省から昨年8月に、高齢者施設の被害に関する情報提供の求めがあり、この対応を優先したためだと発表。隠蔽の意図を否定した。クオモ氏は、メディアや議会への公表を同時に進められなかったのは「キャパシティの問題」としたものの、タイムズの報道は、8月以前に、政権内部で完全データの公表を控えようとする動きがあったことを示している。

なぜ公表しなかった?

タイムズの取材に対して、クオモ知事の特別法務顧問ベス・ガーベイ(Beth Garvey)氏は、「施設外のデータは、保険局が十分に検証されたものであると確認がとれなかったため省かれた」と説明。また追加のデータは報告書の結論を変えるものではないと回答した。

保健局の報道官Gary Holmes氏も4日、声明で、数字は準備できておらず、いずれにしても結論は変わらない、と知事側と同様の回答をしたという。

なお、タイムズによると、ハワード・ザッカー州保健局長は6月初旬の段階で、局員らは、データは報告書に含めるのに十分良いものであると考えていることを知っていたという。しかしザッカー氏は8月の州議会で、数字は監査中のため公表できないと証言していた。

7月の報告書は、クオモ政権が3月25日に定めた高齢者施設に関するガイダンス(5月10日に廃止)を巡る共和党からの批判に反駁するものとして作成された。

共和党議員らは、昨年春の暮れから、ガイダンスが高齢者施設の感染拡大をもたらしたと批判していた。

クオモ政権は報告書で、ガイダンスは「施設の死者数の重要なファクターではなかった」と結論づけ、政権の判断に間違いはなかったと主張した。