クオモNY州知事 新たな火種 「ヒーロー本」の契約金4億円

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パンデミックの対応を綴ったニューヨーク州のクオモ知事の著書「アメリカン・クライシス」(America’s Crisis)の契約金が400万ドル(約4.4億円)を超えていたことが分かった。契約過程を知る人物の話として、ニューヨークタイムズが報じた

同書は、ニューヨークで第2波が拡大し始めた昨年10月中旬に、クラウン・パブリッシングから出版された。著書では、新型コロナウイルスの震源地となったニューヨークでのパンデミックとの戦いや、災害時のリーダーシップなどのあり方などが綴られている。

発売の際、「自画自賛」「災害で金儲けをしている」などと非難を浴びたが、連日の記者会見が全国的な注目を浴びたクオモ氏の著書は、ニューヨークタイムズのベストセラーにもランクインした。

報道によると、クオモ氏は6月中旬に執筆にとりかかっており、側近のメリッサ・デローサ氏らも打ち合わせに参加するなど、製作に協力したとされている。

この時期は、州保健局の高齢者施設における被害に関する報告書が作成された時期と重なっている。
7月に発表された同報告書は、ドラフト段階での総死者は9,844人だったが、最終的に、施設から病院に入院して死亡した人数を取り除き、6,432人と発表された。

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変更には、側近のメリッサ・デローサ氏やジム・マラトラス氏が関わったと報じられている。クオモ政権に対しては、当初から過少報告の可能性があるとして、完全データの開示を求める声が上がっていた。

クオモ政権が総死者数を開示したのは今年1月で、州司法長官から過少報告の可能性が指摘された後だった。現在連邦捜査当局が老人ホームの対応やデータの扱いを調査をしている。さらに州議会でも弾劾調査の一貫として、調べが行われている。

なおクオモ氏の上級顧問、リチャード・アゾパルディ氏は、本の執筆と老人ホームの報告書は「なんら関係がない」と述べている。

倫理規定違反の可能性も

タイムズによると、クオモ氏の側近のステファニー・ベントン氏は6月、著書の草稿を印刷し、知事官邸に届けるようアシスタントに指示するなど、知事室のリソースを利用していた。個人的な利益のために、公的資源を利用することは、州法に違反する可能性があると、同紙は指摘している。

アゾパルディ氏は、側近らは「自発的にプロジェクト」に関わっており、「倫理的要求に沿った許容の範囲」と主張。州のリソースを使用しないよう、あらゆる努力がなされたと反論している。

なおクオモ氏は出版社との契約金などの詳細は発表していない。知事室は、本の売上の大半を、コロナ関連の慈悲団体に寄付するとしているが、具体的な計画は明らかにしていない。

老人ホームの死者数の隠蔽疑惑や、セクハラの告発などのスキャンダルが浮上した後、クオモ政権に対する支持率が急速に低下している。
連邦捜査当局が調査を開始したことを受け、クラウン社は3月、著書の販売促進を停止すると発表した。さらにペーパーバック版の販売計画を取りやめた。NPD BookScanによると、これまでの販売部数は48,000部だという。