ホワイトハウスは3月3日、トランプ大統領の1月の金融取引を記載した財務開示書類を公表した。記録された取引は計83件。このうち80件が購入、売却は3件にとどまった。
取引はJ.P.モルガン証券を通じた「裁量的注文(Discretionary Order)」形式で執行されており、運用はファイナンシャルアドバイザーに委任されている。
資産クラス別に見ると、社債が最多を占め、地方債、銀行・金融機関の優先株、ハイイールド債ETF、普通株と続く。株式ではなく債券・優先株中心というポートフォリオ構成が特徴的だ。
取引は主に以下の流れで集中している。
- 1月2日:18件、50万〜100万ドル規模の取引が大半を占める
- 1月6〜22日:地方債を中心に購入が続く
- 1月30日前後:金融機関の優先株を集中取得・一部売却
1月2日とその後の取引を照合すると、同一銘柄を複数日に分けて購入しているケースが多く、大きめのポジションを段階的に構築している様子がうかがえる。
注目銘柄:政策との接続で読む4ポイント
1. CoreWeave(社債 9.00%、2031年満期)
AIデータセンター向けクラウドインフラを提供するCoreWeaveの社債を、1月2日・20日の両日に購入(各50万〜100万ドル規模)。同社はNvidiaとの関係が深く、AIデータセンター向けインフラ企業として政府のAI投資構想「Stargate」関連銘柄として名前が挙がることもある。利回り9%という水準は、ハイイールド域に相当する。
2. ボーイング(社債 5.04%、2027年満期)
防衛・航空大手ボーイングの社債を1月2日・20日の両日に購入。トランプ政権は防衛予算の拡大と製造業回帰を政策の柱に掲げており、ボーイングはその文脈で恩恵を受けやすい企業の一つだ。なお前月(2024年12月)の開示には含まれていなかった銘柄で、1月から新規に加えたポジションである。
3. 金融機関優先株の「入れ替え」
1月30日前後の金融株の動きは単純な買い増しではなく、銘柄の入れ替えが起きていた点が注目される。Capital One、Citizens Financial、Fifth Third Bancorpの優先株を売却する一方、Bank of America、Wells Fargo、KeyCorpの優先株を新規・追加購入している。
優先株は普通株より値動きが小さく、配当利回りが安定しているという特性を持つ。トランプ政権下での金融規制見直し(バーゼルIII最終化の緩和など)が議論されるなか、金融セクター内での選別的なポジション構築として読める。
4. SPDR ハイイールド債ETF
SPDRポートフォリオ・ハイイールド債ETFを複数回に分けて購入。1月2日の取引では最大500万ドル規模と、今回の開示の中で最も大きな金額帯となっている。ハイイールド債は景気拡大局面・リスクオン環境で相対的に強い資産クラスであり、景気刺激・規制緩和路線を見越したポジションとも読める。
前月との比較:WBD社債を追加購入せず
2025年1月14日に公表された前月(2024年12月)分の開示では、NetflixとWarner Bros. Discovery(WBD)の両社の社債を購入していたことが明らかになっていた。今回の1月分ではNetflixの社債を2回に分けて追加購入(合計60万〜125万ドル規模)した一方、WBD社債の追加購入はゼロだった。
Netflixは1月から2月にかけてWBD買収の入札に参加していたが、2026年2月26日に撤退を表明した。なお、この日は今回の財務開示書類にトランプ大統領が署名した日でもある。
議員のSTOCK法開示と異なり、大統領は同法の適用外であるため、今回の開示は倫理規則に基づくものだ。ポートフォリオの構成そのものが、政権の政策優先順位を映している可能性という観点は投資家にとって意味を持つ。AI、防衛、金融規制緩和、製造業回帰という政権の主要テーマと購入銘柄の業種が重なっている構造は示唆的だ。
詳細な取引データは「Trump Portfolio Tracker」でご確認いただけます→
source:ホワイトハウス財務開示(2026年3月3日公表)、OGE Form 278-T(署名日:2026年2月26日)、TheWrap報道(2026年3月)

