日曜日, 4月 12, 2026
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戦争株安で議員は何を買ったか——「売り」から一転、テックへ戻る資金

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今週開示された議員取引の報告書が示す取引の多くは、3月――イランとの戦争が始まって間もない、市場が最も揺れていた時期のものだ。

開戦前後にはテック株を売り払い、国債・地方債へ資金を移す議員の動きが確認された。アンガス・キング上院議員(無所属・メイン州)は3月24日付の報告書で、メタ、マイクロソフト、ネットフリックスなど大型テック9銘柄を一括売却。マコーミック上院議員(共和党・ペンシルベニア州)は2月下旬、開戦直前にペンシルベニア州の地元インフラ債へ資金を集中させていた。「株から安全資産へ」――それが、戦争間近のワシントンの動きだった。

では、株安が実際に訪れたとき、議員たちは何をしたのか。

押し目に入ったゴットハイマーの「マイクロソフト大口買い」

今週の開示でひときわ目立つのが、ジョシュ・ゴットハイマー下院議員(民主党・ニュージャージー州)の取引だ。

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同議員は3月5日、12日、24日、25日の4回にわたり売買を行い、なかでも3月25日、マイクロソフト株を個人口座と共同口座で合計最大100万ドル規模購入している。

開戦から約4週間。市場の不安と下落が最も価格に織り込まれた局面での集中投資だ。

同議員はエアー・プロダクツやサービスナウなども買い付ける一方、小型・中型株8銘柄をすべて売却した。資金を分散から引き上げ、大型テックに集約。「どこでリスクを取り直すか」という判断の輪郭が見える。

戦中に100件超の買い越し――シスネロス議員の「全面積み増し」

規模と件数で際立つのがギルバート・シスネロス下院議員(民主党・カリフォルニア州)だ。今回の報告書には株式・債券を合わせて100件を超える取引が記載され、買い取引が大半を占める。

マイクロソフト、NVIDIA、Palantir、CrowdStrike、Palo Alto Networksなどテック・サイバーセキュリティ銘柄を幅広く積み増し、カリフォルニア州ヘルスケア施設債も最大50万ドルの規模で取得している。

注目すべきは、同議員が軍事委員会所属という点だ。

戦中の防衛・セキュリティ関連テックの大規模な買い越しは、単なる押し目買いではない。「戦争のどこで価値が生まれるか」に賭けたポジションだ。

同じくフィールズ下院議員(民主党・ルイジアナ州)はAlphabet株を購入、ドナルズ下院議員(共和党・フロリダ州)はNetflixとPayPalを買い向かっている。

株も安全資産も——マコーミック下院議員の「両張り」

マコーミック下院議員(共和党・ジョージア州)は今回、マイクロソフト、ホームデポ、ユナイテッドヘルスなど複数銘柄を購入する一方、米国財務省短期証券(Tビル)も最大25万ドル規模で積み増した。テックへの買い向かいと安全資産の維持を同時に行う「両張り」の構成だ。

株安局面でリスクを取り直しながら、下振れへの備えも手放さない。不確実性が高い局面での、一つの合理的な回答とも読める。

テックに戻らない選択——ジャクソンのBP買い

一方、この流れに乗らない議員もいる。

ジョナサン・ジャクソン下院議員(民主党・イリノイ州)は、AmazonやO’Reillyオートモーティブを売却し、BP株を個人・共同口座の双方で買い増した。外交委員会所属の議員だ。

多くの議員がテックへの回帰を選ぶ中で、同議員だけが選んだのはエネルギーだった。

ホルムズ海峡の封鎖が続く中、この判断は「戦争の長期化」と原油高の持続に賭けたポジションと読むことができる。

「戦前に売り、戦中に買う」――割れるワシントンの見立て

今回の開示から浮かびあがるのは、戦争によるリスクへの対応がワシントン内でも一枚岩ではないという事実だ。

開戦前にテックを手放した議員がいた一方で、株安が深まった3月下旬に大口でMSFTに向かった議員もいた。慎重派と強気派、エネルギー派――同じ戦争を見ながら、資金の行き先は分かれた。

4月11日、イスラマバードで行われた米・イラン直接交渉は、ホルムズ海峡の管理権限をめぐって合意に至らず、停戦は不安定なまま続いている。

議員の資金がテックにとどまるのか、エネルギーへ移るのか。それとも再び安全資産へ逃げるのか。その答えを示すのは、次の「開示」か、市場そのものかもしれない。

*STOCK法は議員の株取引を禁じるものではなく、45日以内の報告を義務付けるものです。金額はレンジ開示であり、具体的な約定価格は非公開です。

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