米シカゴで警官が13歳少年を射殺、ビデオが公開

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シカゴで13歳の少年が警官に撃たれて死亡した事件で、警官のボディカメラの映像が公開された。

映像には、警官が車から飛び降り、「止まれ」と叫びながら逃げる少年を追いかける様子が撮影されている。道路のフェンスが途切れた場所で立ち止まった少年に、警官は「手を見せろ」「それを落とせ」と命令。両手を上げて振り向いた瞬間に発砲した。警官は、救急車を呼ぶよう連絡。その間、少年に心配蘇生を行なった。この後、フェンスの裏に落とされた拳銃を確認する様子も映っている。

発砲した警官に加え、現場に急行した10数名の警官や付近の監視カメラの映像も同時に公開された。

銃弾を受けて死亡したのは、ラテン系アメリカ人の多いリトルビレッジに暮らすアダム・トレド(Adam Toledo)さん(13)。

事件があったのは3月29日午前2時30分過ぎ。シカゴ警察のデービッド・ブラウン本部長が事件後に行なった発表によると、リトルビレッジで、狙撃探知システム「ショット・スポッター」が8発の銃声を検知した。通報を受けた警官が到着すると、2人の人物が近くの路地に逃げるのを目撃した。このうちの1人は拳銃を手にしていた。警官が追いかけると、路地で「対峙」する形となり、発砲した。

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なおアダムさんと一緒にいたルーベン・ロマン(Ruben Roman)容疑者(21)について、シカゴ警察は10日、違法な銃の使用や児童を危険にさらしたなど複数の罪で起訴したと発表した。

クック郡の検察が10日に行なった説明では、ロマン被告がSouth Sawyerアヴェニューと24thストリートで通り過ぎる車に向けて発砲し、これが通報につながった。このときアダムさんは隣にいた。発砲後、2人はSawyerアヴェニューを北に走り、路地に入りこんだところを警官が目撃した。1人の警官はロマン被告に突進し、もう1人の警官がアダムさんを追った。アダムさんはこの時右手に銃を持っており、振り向いたところを撃たれた。

アダムさんの手から落ちた拳銃は、ロマン被告が使用したもので、現場から回収された7発の薬きょうと一致した。事件後、アダムさんからは射撃残渣の検査で陽性が確認されたという。

15日に公開された映像では、アダムさんは振り向く前、銃のようにみえるものを手にしているが、手を挙げて振り向いた時、両手は空だった。

アダムさんの家族の弁護士、アディーナ・ワイス・オルティス氏は会見で、アダムさんは警官の指示に従ったと主張。「アダムさんは命の最後の瞬間、銃を手にしていなかった」と述べ、「警官は彼に向かって叫んで、手を見せろと言った。アダムさんは従い、振り向いた。警官によって胸を撃たれた時、彼の手は空だった」と語った。振り向く前に銃を持っていた可能性について否定しないと述べつつ、ビデオが解析されるまでは、断言できないと話した。

ニューヨークタイムズは、アダムスさんを撃った警察官はエリック・E・スティルマン(34)氏だと報じた。スティルマン氏の弁護士は「警官は決定を下さなければならない、一瞬の状況に身を置かれた」と述べ、脅威の性質からして、発砲は正当化されると主張している。

スティルマン氏は海外で従軍した後、2015年8月からシカゴ警察に加わっていた。

ワシントンD.Cの元警察署長およびフィラデルフィアの元警察委員長で、現在CNNで法執行機関に関するアナリストを務めるチャールズ・ラムゼー氏は、アンダーソン・クーパー氏の番組に出演し、発砲は「合理的」との見方を示した。

ラムゼー氏は、アダムさんは右手に銃を持っているように見えるとした上で、「彼は突然振り向いた。この時警官が発砲している」「警官が銃を目にしてから打つまで、実際に一秒もなかった。私は合理的だと考える」と語った。「私は警察の不当な権力の行使に声を上げることを厭わないが、これはこのケースに該当しない。夜中に路地で武装した人間を追跡した警官がある人がどれほどいるか知らないが、私には経験があり、これがどのようなものか理解している」と述べた。

現在、ジョージ・フロイド氏死亡事件の裁判が進行している。今月11日には、フロイド氏が死亡した現場から十数キロ離れた場所で、白人の女性警官が黒人男性を射殺する事件があった。

シカゴのロリ・ライトフット市長はボディカメラの映像の公開に先駆けて開いた会見で、警察の不当行為を調査する市の機関による調査が進行中であるとし、市民には完全な事実が解明されるまで判断を控えるよう要請。平和と平静を保つよう求めた。