チャージングブルの作者、フィアレスガールが作品価値を損ねると非難

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ウォール街に設置された「恐れを知らない少女」(フィアレスガール、Fearless Girl)。猛々しいチャージング・ブル(Charging Bull)に対峙する形で、立ちはだかる姿が話題となっているが、そのブルを作った彫刻家のアルトゥーロ・ディ・モディカ(Arturo Di Modica)氏(76)が、作品の持つ法的権利を侵していると、代理弁護士と共に会見を行った。

fearless girl
©mashupNY

この少女像は、今年3月7日の設置直後から、ジェンダー・ダイバーシティに立ち向かう人々に勇気を与える像として、大きな反響を呼んだ。当初設置は1週間の予定だったが、来年の国際女性デー(3月8日)まで設置の延長が決定。ブルと共に、フィナンシャル・ディストリクトの観光名所として、人気となっている。

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ディ・モディカ氏は、この少女像が、2つの大企業、ボストンの投資会社ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ(State Street Global Advisors、SSGA)と、ニューヨークの広告代理店マッキャン(McCann)による「広告による奇策」だと非難。
アーティストの許可なしに、少女像がブルの向かいに設置されたことで、作品が本来持つ意味合いが歪められたと主張。弁護士のNorman Siegel氏は、Visual Artists Rights Act of 1990(VARA、アーティストの著作者人格権”moral rights”を保護する法律)を根拠に、彼の著作物のコピーライトは、侵害されていると主張。市がどのようなプロセスで、この像の設置延長を許可したのか書面を要求している。そして、この少女像は取り除かれるべきだと訴えた。

NBCニュースによると、ディ・モディカ氏は会見中、感情的になる場面があり、このブルが持つメッセージは「世界の自由、平和、強さ、愛の力です。しかし、少女像がやってきた今は、悪くて脅威の象徴、ネガティブなものとなってしまっている。」と述べ、「彼女はどこか他の場所に移動させてほしい」と付け加えた。

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チャージング・ブルのブロンズ像は、ブラックマンデー(株式大暴後)後の1989年、証券取引所の前に、許可なく夜間のうちに設置された。しかし、この像はアメリカの金融復活のシンボルとして希望を与えるもので、多くの人々から支持されたため、現在の場所に移動して、現在まで継続的に設置されている。

この訴えに対し、ニューヨーク市長のビル・デブラシオ氏は、ツイッターで少女像を支持した。


「女性に場所を占有されるのが嫌いな男性がいる。これこそ、このフィアレスガールが必要とされる所以さ」

ディ・モディカ氏らはまだ訴訟を起こしておらず、会見では今後の対応について名言を避けている。

このニュースを見た一般の人からは、「アーティストに同意する。彼の当初の意図とは違う意味合いとなってしまっている。彼の作品は1つの独立した作品として取り扱うべき。」という意見もある一方、「これはパブリックアートに対する世間の反応であって、それがいやならプライベート作品として飾っておけばいい。」「彼はかつては、社会にインパクトを与えるような勇敢なアーティストだったのに、一世代経た今では、同じことをしている新手のアーティストを非難するとは。」「ブルは、ウォールストリートでは、企業の拝金主義や腐敗の象徴となっているよ」という賛否両論の声が上がっている。