28日、メリーランド州アナポリスの新聞社キャピタル・ガゼット(Capital Gazette)で銃撃事件が発生し、5人が死亡、2人が負傷した。
容疑者の男性は、ジェロッド・ラモス(Jarrod W. Ramos)38歳で、ショットガンで1階のガラス扉を破り、編集室に押し入り銃を乱射した。その後、地元警察に拘束されたが、IDなどは所持しておらず、警察の捜査に協力しなかったため、顔認証システムで身元を割り出したと発表された。
#AnnapolisShooting Suspect
—Jarrod Ramos—
•38 yrs old
•Faces five counts of 1st-degree murder
•Police: Armed w/ shotgun, smoke grenades
•ID’d via facial recognition software
•2011: Capital Gazette reports on harassment tied to Ramos
•2012: Ramos sues paper for defamation pic.twitter.com/jIK3TXah4z— Fox News Research (@FoxNewsResearch) June 29, 2018
ニューヨークタイムズによると、ラモス容疑者はコンピューターエンジニアリングの学位を持ち、2012年にはアメリカ合衆国労働統計局で働いていたという。
事件発生時、部屋にいた記者フィル・デイビス(Phil Davis)氏は、銃撃の様子を「デスクの下で隠れている間に、複数の人が撃たれるのを聞いた。そして、ガンマンが補填する音が聞こえたが、これほど恐ろしいものはない。」とツイートした。この徳の状況を「戦争地帯のようだった。」と語っている。
There is nothing more terrifying than hearing multiple people get shot while you’re under your desk and then hear the gunman reload
— Phil Davis (@PhilDavis_CG) June 28, 2018
事件発生の翌日、ラモス容疑者は、5件の第1級殺人で訴追され、保釈は認められず拘留された。
審理では、社員が逃げられないよう裏口のドアを塞いでいたことや、犯行に使った口径12ゲージショットガンは、約1年前に合法的に入手したこと、地元警察は2013年にラモス容疑者をキャピタル・ガゼット社を脅迫した容疑で捜査を行っていたが、罪には問われなかったことが明らかとなっている。
嫌がらせ行為で有罪に
ラモス容疑者は、キャピタルに対して、過去に何度もソーシャルメディアを通じて脅迫を行っており、アナランデル郡の警察は、同社を標的にした犯行だと発表。同社に対する長年の恨みが、犯行に至った原因だという見方を強めている
アナ・ランデル(Anne Arundel)郡の裁判所の資料によると、2009年に交際していた高校時代のクラスメートへのストーカー及びハラスメントを行ったとして、2011年に有罪判決が下されている。
90日間の懲役を言い渡されたが、投獄ではなく、女性に近づかないことやセラピーを受けることを条件に、18カ月の保護観察処分が下された。
有罪判決の5日後、キャピタルは「ジャロッドはあなたの友人になりたかった」というヘッドラインでコラムを掲載した。コラムにはラモス容疑者が被害女性に自殺を促したり、女性の務める銀行に解雇を促すメールを送っていたことなどが記載されている。この記事は、ラモス容疑者の怒りをかうこととなった。
キャピタルとの法廷闘争
NBCニュースなどによると、2012年7月に、ラモス容疑者は、キャピタルのオーナーを名誉毀損で提訴。その2ヶ月後にもプライバシー侵害を申し立てた。2013年、記事は事実に基づいて書かれており、どのような形で、彼に損害を与えたのかを立証できなかったため、申し立ては却下された。ラモス容疑者は控訴するも、2015年に再び却下された。
2011年からは、ツイッターを通じて、元エグゼクティブエディター及び発行人のトーマス・マーカード(Thomas Marquard)氏や、コラムを書いた記者のエリック・ハーレイ(Eric Hartley)氏など特定の人物を攻撃するようになる。2013年には今回殺害された編集副主幹のロブ・ヒアーセン(Rob Hiaasen)氏を非難する内容も見られるという。
トランプ大統領の言葉を引用し、メディアを非難するような投稿もある。
また、事件を起こす数時間前には、名誉毀損の訴えを却下した裁判官の名前がつけられたハンドルネーム宛に、冒涜するようなメッセージが投稿されている。
NBCニュースによると、876件のツイートのうち149件がキャピタル・ガゼットに言及する内容だった。
今回の事件に関して、元発行人のトーマス・マーカード氏は、ラモス容疑者が、新聞社にとって長年脅威の存在であったことを明かしている。「会社に来て、我々を銃撃するのではないかと弁護士に相談したことがある」とニューヨークタイムズに述べている。マーカード氏は、事件が発生し容疑者の名前を聞いた時、驚かなかったとABCニュースに語った。
事件翌日も新聞を発行
日刊新聞「ザ・キャピタル」は、事件翌日の29日も通常通り新聞を発行した。1面には「キャピタルで5人死亡」と端的な見出しが掲載され、今回犠牲となった記者4名と営業1名の写真が掲載された。
事件当日、記者のチェース・クック氏は「明日新聞は発行する」とのツイートで発表した。
I can tell you this: We are putting out a damn paper tomorrow.
— Chase Cook (@chaseacook) June 28, 2018
キャピタル・ガゼットは、米国内で最も歴史ある新聞の一つ。1927年に英国のジャーナリスト、ウィリアム・パークス氏が「メリーランド・ガゼット」として立ち上げた。
発行日の深夜、ツイートで一面がシェアされた。
— Capital Gazette (@capgaznews) June 29, 2018
白紙に「Today, we are speechless」(言葉もない)と書かれたオピニオンのページには、銃撃で犠牲になった仲間の名前、ジェラルド・フィッシュマン(Gerald Fischman)氏、ロブ・ヒアーセン(Rob Hiaasen)氏、ジョン・マクナマラ(John McNamara)氏、レベッカ・スミス(Rebecca Smith)氏、ウェンディ・ウィンタース(Wendi Winters)氏の名が綴られた。
Tomorrow this Capital page will return to its steady purpose of offering readers informed opinion about the world around them. But today, we are speechless. pic.twitter.com/5HzKN2IW7Q
— Capital Gazette (@capgaznews) June 29, 2018
29日夜、犠牲者の追悼のため集まった人々。記者のパット・ファーガーソン(Pat Furgurson)氏は「我々は敵ではない。私たちは、あなたたちそのものだ。」と述べ、メディアを敵視する風潮に対する言葉とも思われるメッセージを発した。
”We are not the enemy,” Capital reporter Pat Furgurson told the crowd. “We’re you.” Mourners gather for victims of the Capital Gazette shooting. https://t.co/C0ZWfikxmU pic.twitter.com/ZEAzX0BqAc
— Capital Gazette (@capgaznews) June 30, 2018