米女子バスケ選手「囚人交換」も元海兵隊員の釈放実現せず、家族が失意表明

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バイデン大統領は8日、今年2月にロシアで拘束された米女子プロバスケットボールのブリトニー・グライナー選手と、米国で収監中の武器商人ビクトル・ブート氏の1対1の囚人交換が成立し、釈放されたと発表した、

ホワイトハウスで会見を開いたバイデン氏は、グライナー選手と電話で話したと明かし、「彼女は安全で、飛行機に乗って、家に向かっている」と語った。ただし元海兵隊員ポール・ウィラン氏の釈放はかなわなかった。今年7月、米政府は、二人とブート氏の囚人交換を提案したと報じられていた。

グライナー選手は今年2月、ロシアで禁止されている大麻成分入りの「ハシシオイル」を持ち込んだとして拘留され、8月に違法薬物所持および密輸罪で懲役9年6カ月の判決を受けた。上訴したが棄却され、10月に刑が確定した。

ウィラン氏は、2018年にロシアでスパイ容疑で逮捕され、2020年に16年の実刑判決を受けた。

ウィラン氏の双子の兄弟デビッド氏は同日発表した声明で、グライナー選手の帰国を祝福する一方で、兄弟の釈放が実現しなかったことに失意を表明した。

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デビッド氏は「不当に拘束された者が帰国するほど、すばらしい成功はない。バイデン政権は実現しない取引を待つのではなく、実現可能な取引を結び、グライナー氏を帰国させるという正しい決断をした」と評価した上で、「ポールはまだ人質だ。これをあと何回書けば良い?」と続け、「ポール抜きの交換の可能性はあったものの、それでも家族は打ちひしがれている。ポールが知ったら、どう感じるか推し量ることさえできない。ポールは4年間、この不正を生き抜こうと必死なのだ」と述べた。

デビッド氏は、バイデン政権から事前に通知を受けたと明かしつつ、ポール氏が取り残されるのは4月に続く2回目だと指摘。「自国の政府が、外国の刑務所からの解放に2度失敗していることを知りながら、日々どのように生き抜いていけるのだろうか」と加えた。さらに、米政府は「より積極的なる必要がある」と主張。「ロシアのような悪党が、無実のアメリカ人を捕まえようとしているのならば、米国は迅速かつ、より直接的な対応を取らねばならず、事前に準備する必要がある」と述べた。

バイデン氏は会見で「何年間も不当に拘束されているポール・ウィラン氏を忘れていない。これは誰を帰国させるかという選択ではなかった。今年の初めに得た機会では、トレバー・リード氏を帰国させている」と説明。「悲しいことだが、ロシアはポールをブリトニーの件と異なる扱いとしている」と述べ、「我々は決して諦めない」と強調した。

なお、米国が解放したブート氏は、世界各地のテロリストグループや独裁政権に兵器を売りさばいたことから「死の商人」の愛称で知られ、2005年の映画「ロード・オブ・ウォー」でニコラス・ケイジ扮する武器商人のモデルにもなった。米国のおとり捜査で、タイで拘束され、2010年に米国に身柄が引き渡された。翌年、米国人の殺害を共謀した罪や、外国のテロ組織に指定された集団に物理的な支援提供を計画したなどの罪で有罪となり、25年の禁錮を言い渡された。

囚人交換の話が明るみに出た際、グライナー氏と世界に危険をもたらしたブート氏との交換は不釣り合いで、正当化できないといった否定的な意見もあり、ウィラン氏を追加した場合でも、司法省が反対するだろうといった憶測も流れていた。