マッサージ店銃撃事件 アジア系女性のステレオタイプ化、宗教との関連を指摘する声

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福音派の純潔文化

このほか、事件の背景について、福音派の「純潔文化」を示唆する声も上がっている。

ワシントンポスト紙によると、複数の専門家は、ロング容疑者と福音派の関係が、「純潔文化」に目を向けることになるだろうと指摘している。「純潔文化」は、一部の福音派の人々にある「結婚以外のいかなる性的欲望はみだらであり、よって罪深い」といった考えだという。若い頃から性的欲望をコントロールすることを教えられ、それができなければ、性依存症やポルノ依存症と分類されることもあるという。

ロング容疑者は、アトランタ郊外にあるクラブアップル・ファースト・バプティスト教会のメンバーで、最初に発砲した店舗「ヤングズ・アジアン・マッサージ」の近くにある福音派の治療施設「HopeQuest」で、2019年と2020年に性依存症の治療を受けていた。同施設は主要な福音派の機関とつながっており、「性依存症」や「ポルノ依存症」の治療サービスを宣伝しているほか、「脱ゲイセラピー」を推進しているという。

「The Great Sex Rescue」の著者、Sheila Wray Gregoire氏は同紙に、純潔文化に関して、「有名な福音主義の文学では、女性は、夫がポルノを見ないよう、望む時にセックスをするよう教えられている」と述べ、「女性は人々としてではなく、打ち負かすべき敵として見られている」と語った。

また「Talking Back to Purity Culture」の著者、Rachel Joy Welcher氏は「福音主義の文学では、女性はよく性的脅威または性的充足として扱われている」と説明。「男性に欲情しないように教えているが、解決策といえば、結婚するまで女性を避け、性的エネルギーを妻に注ぐといったものだ」「妻は、性のはけ口として描かれている」と語った。

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別の施設でロング容疑者とルームメイトだったという人物の話によると、ロング容疑者は、ポルノ中毒になったことを責め、インターネット上の誘惑を避けるため、折りたたみ式携帯電話を使用していたという。ロング容疑者は、「救済」が危険にさらされていると感じており、「光を歩いていない、暗闇を歩いている」と述べるなど、罪の意識に苛まれていたという。施設では互いに責任を負うことを奨励しており、この友人は少なくともロング容疑者から3回罪を告白されたとしている。スパから戻ったロング容疑者から、自殺の考えを抱いていると明かされたこともあったという。

事件後、協会側は声明で、ロング容疑者の家族が長らく教会のメンバーだったと認めつつ、「想像を超えた、おぞましい殺人は、彼自身の信仰告白と直接的に矛盾している」と発表。「彼1人が、自身の邪悪な行動と欲望に責任がある」と述べ、「彼が性的行為を求めた女性らは、彼の倒錯した性的欲望に責任はなく、殺人にいかなる責を負うものでもない」と述べている。

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