悪魔のいけにえ?トラビス・スコット野外フェス「陰謀論」が拡散

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5日、テキサス州ヒューストンで開催された米人気ラッパー、トラビス・スコットの野外フェスティバルで観客が殺到する事故があり、8人が死亡、300人以上が負傷した。

捜査当局は事件の可能性があるとして、犯罪捜査を開始している。これまでのところ、逮捕者は出ていないが、被害者からは既に、主催者のトラビス・スコットや運営団体、ゲスト出演したドレイクなどに対して、数十件の民事訴訟が提起された。訴訟件数は今後、さらに増加するとみられている。

事件直後からSNSでは「悪魔のいけにえ」や「悪魔崇拝儀式」などのワードがトレンドとなるなど、陰謀論が拡散されていると報じられていたが、この度、TikTokは動画を削除するなどの対応を始めたことが分かった。
ニューズウィークによると、同社は「コミュニティのガイドラインに反した」と理由を説明している。

陰謀論が拡散されたワケ

トラビス・スコットのステージのセットが地獄のイメージに関連付いており、悪魔に捧げるために、観客を犠牲にしたという陰謀論が拡散されている。

山の形をした舞台装置に「向こう側で会おう」と書かれていたことや、会場の入り口に設置された巨大なトラビス・スコットの模型が、ルネサンス期の画家ヒエロニムス・ボッシュが描いた「リンボーのキリスト」の絵画に類似していると指摘する声、着用していたTシャツや、イベントのポスターが地獄を示しているなどの説が投稿された。

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あるTikTokユーザーは、燃え盛る山のセットは「イルミナティのシンボル」で、「われわれからエネルギーを吸収している。トラビス・スコットは人々の魂を奪っている」と主張した。

また、オープニングで8つの火柱が上がり、コウモリのプロジェクションが投影された場面を指し「悪の権化」だと指摘するユーザーや、パートナーのカイリー・ジェンナーが、動画を投稿した直後に「ステージ(地獄)の扉が開き、パニックが起きたなどの「こじつけ話」も投稿されている。

なお紛らわしいことにトラビス・スコットはイベント前、ツイッターで「金曜は祝祭だ」などとツイートしていた。

これらのビジュアル的なイメージに加えて、Viceは迷信的な数霊術が大量にTikTokなどに投稿され、陰謀論に拍車をかけたと伝えている。

トラビス・スコットがインスタグラムに謝罪文を投稿した時間帯や、イベントがカイリー・ジェンナーの母親、クリス・ジェンナーの66歳の誕生日だったことや、「悪魔教会」創設日から66カ月と6日後に開催されたなど根拠のない説が出回っている。

悪魔崇拝に関する陰謀論はネットで人気が高く、ユーチューバーも飛びついた。

50万人近いフォロワーを持つユーチューバーのRich Luxさんは、ステージのセットの上を歩く人影や、壇上から飛び降りた人物は、悪魔かエイリアンだと主張。トラビス・スコットは、人が倒れているのを高い位置から見下ろしながら、悪魔の歌を歌い続けたなどと解説した。

また、実際の死者数は、報じられているよりもはるかに多く、メディアが隠蔽しているなど、お決まりの主張も出回っている。

Qアノンの陰謀論者ジョン・サバル(John Sabal)は、「悪魔の儀式は、事前に計画されたもで、偶然ではない」と解説したという。なおQアノンでは、リベラルのエリートが、子供の人身売買に関与する影の政府を支配しており、前大統領のトランプ氏や、故ジョン・F・ケネディ・ジュニア(Qアノン界では、まだ生存していることとなっている)が戦っていると根拠のない主張を展開している。

インサイダーはTikTokで、#Astroworldとハッシュタグのついた動画が、20億回以上再生されたと伝えている。

TikTokで陰謀論が拡散されていることについて、シラキュース大学でSNSを研究するJennifer Stromer-Galley教授はガーディアンに対し、一般的に陰謀論者は年齢層が高いが、若者は、より影響を受けやすい可能性があると懸念を示している。