米アマゾン 国内全従業員の最低賃金を15ドルに引き上げ その狙いは?

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米アマゾンは2日、米国内の従業員の最低賃金を15ドル(約1,650円)に引き上げると発表した。新たな賃金は、フルタイムやパートタイム、一時雇用、季節従業員全員に適用され、11月1日から適用される。
現在アマゾンは、25万人以上の従業員に加え、ホリデーシーズンに向け、約10万人の期間従業員を雇い入れる予定だ。

アマゾンのジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)最高経営責任者(CEO)は、今回の決定に関して、「我々に対する批判を受け、実現すべきことを懸命に考えた結果、他社を牽引していきたいという結論に至った。」と述べた。「今回の変更を楽しみにしている。競合他社や大企業の雇用主が、我々に加わることを期待している。」と声明で述べた。

同社の公共政策チームは、連邦政府の最低賃金の引き上げを擁護している。最低賃金は州や市によって異なるが、連邦法では、最低賃金は7.25ドルと定められている。グローバルコーポレート室のジェイ・カーニー(Jay Carney)上級副社長は、「最低賃金は、この10年近く横ばいだ。」とし、議員らの支援を得るよう努めていると声明で述べた。

最低賃金引き上げの理由は?

アマゾンの倉庫などの労働環境や、賃金水準などに関しては、これまで様々な批判が寄せられてきた。先月、民主社会主義を標榜するバーニー・サンダース上院議員(無所属、バーモント州)は通称「Stop BEZOS」という新たな法案を議会に提出した。法案は従業員数500名以上の企業に対し、低所得の従業員が政府から受給している公的扶助と同等の金額を、税金として政府に納めることを義務付けるという、実質的な賃上げを要求する内容となっていた。提出にあたり、サンダース議員は、「今年初めから、資産が毎日26億ドル増加しているが、ベゾス氏が数千人の従業員に支払っている賃金はかなり低く、彼らは生き抜くためにフードスタンプやメディケイド、住宅助成制度に頼らなければならない」と批判していた。

最低賃金引き上げの一報を受け、サンダース議員はツイッターで、「まさに正しい行い」と、ジェフ・ベゾスを讃えた。

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一方、ニューヨークマガジンは、歴史的低水準が続く失業率による人手不足が、賃上げに影響したとの見方を示す。アマゾンは、ホリデーシーズンに10万人の季節労働者を雇用する計画で、FedExは5.5万人、UPSは10万人を計画しているという。また、大手小売店のターゲットは最近、賃金を15ドルに、コストコは14ドル、ウォルマートは11ドルに設定しているという。

また、同誌は、アマゾンの巨大な事業規模と分野、資本が極端に薄い利益(またはマイナス)の運営を可能にするといい、産業の賃金水準をあげることで、他社を圧迫し、長期的なマーケットシェアの拡大につなげようとする狙いもあるとみている。

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