カニエ・ウエストとの提携めぐりアディダスに集団訴訟

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差別的な言動を理由にラッパーのカニエ・ウエスト(Ye)とのパートナーシップを解消したドイツのスポーツブランド、アディダスに対して、集団訴訟が提起された。

ワシントンポスト紙によると、訴訟はアディダスの株主を代表して起こされたもので、原告はオレゴン州の連邦地方裁判所に提出した訴状で、同社は、カニエがもたらしうる損害について数年前から認識していたと主張。さらにカニエがもたらす財務状のリスクを適切に制限することをしなかったとしたほか、同社が発した声明に「重大な誤り、または誤解」を招くものがあったと主張している。

AP通信によると、パートナーシップ終了による2022年の最後3ヶ月間の同社の売り上げの機会損失は6億ユーロで、結果的に同社を5億1,300万ユーロの純損失に追い込む主な要因となった。

訴状ではまた、昨年退任の計画を表明したカスパー・ローステッド最高経営責任者を含む上級幹部らが、カニエとの関係継続に伴うリスクを4年前に話し合っていたと報じたウォール・ストリート・ジャーナルの記事にも言及しているという。

アディダスは昨年10月25日、「反ユダヤ主義やその他のいかなる種類のヘイトスピーチも容認しない」とした上で、「Yeの最近の言動は、容認できない憎悪に満ちた危険なものだ」と指摘。2013年にはじまったパートナーシップを直ちに打ち切ると発表した。

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カニエは同月3日、自身のブランドYeezyのファッションショーで、「ホワイトライブズマター」と書かれた長袖Tシャツを着用してステージに登場。その日のインスタグラムに「ブラックライブズマターが詐欺であったことは、周知のとおりだ。今は終った。歓迎する」と投稿し、物議を醸した。

この5日後には、2年ぶりに更新したツイッターで「ユダヤ人にデスコン3(death con 3)をするつもりだ」と投稿。ツイッターのポリシー違反にあたるとして、アカウントが一時凍結された。なお、デスコンは、安全保障上の脅威を示す軍事用語「DEFCON」(デフェンス・コンディション)を引き合いにしたものとみられる。

さらに同月15日に配信されたポッドキャスト番組「Drink Champ」では、警察官に殺害された黒人男性、ジョージ・フロイド氏はフェンタニルの摂取によって死亡したと主張し、非難を浴びた。

訴状ではまた、2018年にテレビで物議を醸したカニエの「奴隷はチョイス」発言にも言及しているという。

当時、トランプ前大統領への支持を示すMAGAキャップをかぶり写真をとったことで非難を浴びたカニエは、TMZに出演し、自身の振る舞いを擁護する一方で、奴隷制について言及。「奴隷が400年も続いたというのは、選択だったかのように聞こえる」と述べると、番組スタッフらと激しい論争になった。

なおアディダスの広報はAP通信の取材に、原告の主張には「根拠がない」と反論。「われわれ自身を強力に守るために、あらゆる手段を講じる」と戦う姿勢を示している。