米アカデミー 先住民女優に50年ぶり謝罪、ビンタ騒動超える「最も醜い」事件とは?

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映画芸術科学アカデミーは、1973年の第45回授賞式でマーロン・ブランドに代わり、スピーチをしたサチーン・リトルフェザーに謝罪をしたことを明らかにした。

同年の主演男優賞にノミネートされた俳優のマーロン・ブランドは、ハリウッドの先住民の扱いに抗議の意を示すとともに、サウスダコタ州ウンデッドニーで進行中だった抗議活動に注目を集めるため、自身は授賞式に参加せず、代理として、アパッチ族出身の女優で活動家のサチーン・リトルフェザーにスピーチを依頼した。リトルフェザーは壇上で、「残念ながらこの素晴らしい賞を拒否する」とブランドの代わりに発言。「今日の映画業界におけるアメリカン・インディアンの扱い方が理由です」と話すと、拍手とともにブーイングの野次が飛んだ。その後、スピーチをきっかけにハリウッドでブラックリスト扱いされ、脅迫を受けることもあったという。

なおリトルフェザーは2021年の英紙ガーディアンのインタビューで、ブランドは8ページにおよぶ声明を用意していたが、主催者側から60秒以内でスピーチを終えるよう命じられ、慌てて考えたと明かしている。

アカデミーは15日、本人に宛てた6月18日付の書簡を公開。この中で「スピーチによって受けた虐待は正当化できません」とした上で「あなたが経験した精神的負担と業界で被ったキャリアの損失は取り返しがつかない」と説明。「あなたが示した勇気は長い間認められてきませんでした。このことについて、深くお詫び申し上げるとともに、心からの敬意を表します」と告げた。

声明では、謝罪までに50年を要した説明はみられなかった。同件は、アカデミー賞の黒歴史としてたびたび浮上しており、最近では、今年の授賞式のウィル・スミスのビンタ騒動後、問題を改めて指摘する声がネットに相次いで投稿されていた。

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「ウィル・スミスの昨晩の行為は間違っているけど、最も醜いものではない。その賞(最も醜い賞)は1973年に真のアメリカ人のサチーン・リトルフェザーを差別的に虐待し、ブーイングをしたジョン・ウェインとクリント・イーストウッドに与えられるべきだ」

「みんなオスカーの最も醜い瞬間だと言ってるけど、ジョン・ウェインはこの女性を攻撃するためにステージに上がろうとして6人の警備員に取り押さえられた」

アカデミー賞史上「最も醜い」事件

スピーチに対する反発は客席からのブーイングに止まらなかった。舞台に上がった彼女に舞台袖にいた西部劇の人気スターで、かつて白人至上主義を認める発言をしたことのあるジョン・ウェインが激怒し、力尽くでスピーチを阻止しようとしたという。

リトルフェザーは昨年、以前ガーディアンの取材に「ステージから引き摺り下ろそうと向かってきた」と話し、「6人の警備員に取り押さえられた」と振り返っている。

さらにその後、プレゼンターとして登壇したイーストウッドは「ジョン・フォードの西部劇で撃たれた全てのカウボーイを代表して賞を紹介するべきかどうかわからないが」と、リトルフェザーの登壇をジョークにして会場から笑いを誘った。舞台裏に戻ると、自分に向けて先住民の雄叫びやトマホークチョップといったステレオタイプな仕草をする人々もいたという。

ちなみに、ジョン・ウェイン自身は後に「もしブランドに何か言いたいことがあるのなら、あの夜、インディアンの格好した見知らぬ小娘の代わりに、自分が舞台に立って自ら意見を述べるべきだった」と話したと伝えられている。