欧州銀行監督機構(EBA)は10月14日、Circleが発行するドル建てステーブルコイン「USDC」を、EUの暗号資産規則(MiCA)で初めて「重要な電子マネートークン」に指定した。11月12日から、Circleの欧州法人が発行するUSDCの準備資産や自己資本は、フランス当局に代わってEBAが直接監督する。Circle(NYSE: CRCL)の株価は、報道が広がった10月15日に9.33%上昇した。ただし「重要」指定は、市場からの信認を高める一方で、準備資産の持ち方と自己資本に追加の義務を課す。
EBAは10月14日の発表で、Circleの欧州法人Circle Internet Financial Europe SASが発行するUSDCを、MiCA上の「重要な電子マネートークン(EMT)」に分類した。EUでMiCAに基づき届出されたEMTは45あり、「重要」とされたのはUSDCが初めてとなる。なお、EMTは、特定の法定通貨(USDCなら米ドル)と価値を連動させるステーブルコインを指すMiCAの用語だ。
11月12日から、USDCはEBAとフランスの健全性監督破綻処理機構(ACPR)による「二重監督」に移る。EBAが自己資本、準備資産、流動性要件、再建・償還計画を監督し、ACPRは引き続きガバナンス、適格株式保有、経営陣の適格性審査、外部委託、利益相反を監督する。
USDCはEUでは欧州法人が、米国ではCircle Internet Financial, LLCが発行している。国境をまたぐ監督のため、EBAは米ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)と覚書を結び、情報交換と協力の枠組みを作った。
EBAは「重要」かどうかを毎年評価し直す。今回の指定が恒久的な地位を保証するものではない。
重要指定の意味
指定によって変わるのは、監督当局だけではない。通常より厳格な義務が課される。主なものは次の3つだ。
- 自己資本:準備資産平均の3%以上(重要でないEMTは準備資産平均の2%以上)
- 準備資産のうち銀行預金:60%以上(重要でないEMTは30%以上)
- 準備資産の独立監査:指定日から6か月ごと
銀行預金の比率の引き上げ(30%以上→60%以上)は、Circleの収益に響く可能性がある。Circleの収入の大半は、USDCなどの準備資産から得る運用益だ。2026年4~6月期、Circleの総収益7億131万ドルのうち、準備資産収入は6億6,773万ドルで約95%を占めた。準備資産は、銀行預金と、BlackRockが運用するCircle Reserve Fundで保有している。同ファンドは短期・高流動性資産を運用するマネー・マーケット・ファンド(MMF)だ。銀行預金の比率が上がれば、その分だけMMFで運用できる部分は減る。
ただし、影響の大きさは現時点では測れない。USDCは米国法人とフランス法人がそれぞれ発行し、同じトークンとして流通する「マルチ発行」の仕組みをとる。現在は準備資産も発行地域ごとに分けて持っている。今回の指定の対象は、欧州法人が発行するUSDCだ。EBAの発表は、欧州法人が発行するUSDCの規模を示していない。
USDTはMiCA準拠を見送り
世界最大のステーブルコインUSDTを発行するTetherは、MiCAの認可を申請していない。2026年7月1日にMiCAの移行期間が終わり、Coinbase、Kraken、Crypto.comなどのEU向けサービスではUSDTの取扱いが停止・制限された。
Tetherのパオロ・アルドイーノCEOは、2025年5月、米メディアCointelegraphの取材で、MiCA不申請の理由として、準備資産の60%をEUの銀行預金として保有することを求める仕組みを挙げた。
同氏は、大手銀行がステーブルコイン関連の預金を引き受けにくいとし、その場合には発行体が複数の中小銀行に資産を分散せざるを得なくなると指摘した。その上で、銀行が預金の一部を貸し出す部分準備制度の下では、大口の償還請求が集中した際に銀行が即時に資金を用意できず、ステーブルコインの発行体も流動性危機に陥り得ると主張した。これは同氏の試算と懸念を示したものだが、準備資産を銀行預金へ集中させることで、銀行の信用リスクと流動性リスクがステーブルコインに及び得るという問題意識を浮き彫りにしている。
株価の反応と今後の日程
Circleの株価は、発表が広がった10月15日に前日比9.33%高の86.97ドルで引けた。翌16日は5.46%安の82.22ドルで引け、発表前の13日の水準(84.27ドル)を下回った。
報道は、10月15日の上昇の理由として規制面の追い風を挙げている。ただし前日は地合いで大きく下げており、反発の分も含まれる。
今後の主な日程
- 11月4日(水)8:00 ET/日本時間同日22:00:Circleの7~9月期決算の発表
- 11月12日(木):EBAによるUSDCの直接監督の開始
- 11月中(日付は未定):OCCがGENIUS法の最終規則を公表する予定
- 2027年1月18日:GENIUS法の施行期限
11月4日の決算では、EU事業の規模、準備資産の運用益の見通し、今回の指定に関する説明が注目される。
※本記事は情報提供を目的としており、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。




